【ワシントン時事】トランプ米大統領はイランとの停戦と和平交渉開始に当たり、「全面的な勝利だ」と強調した。しかし、トランプ政権が掲げた対イラン軍事作戦の目標はいずれも十分に達成されたとは言い難い。
トランプ氏は6日の記者会見で、「イランに核兵器を持たせるわけにはいかない」と話し、核開発能力の「完全除去」を一連の軍事作戦の最大の成果に掲げた。
ただ、核兵器の原料となり得る高濃縮ウラン計約440キロはイラン国内に残ったままだ。地下施設で保管されているとみられるウランを回収するには、重機を持ち込む必要がある上、ウランを納めた容器を慎重に取り扱わなければならない。このため、国際原子力機関(IAEA)の専門家の同行が望ましいとされる。
イランでは、米イスラエル両軍の空爆で殺害されたアリ・ハメネイ師の後継の最高指導者として、次男のモジタバ師が選出された。米国に敵意を燃やしてきたイスラム体制は存続しており、「米国のさらなる攻撃を抑止するため、より強い決意で核能力の獲得を目指すようになる可能性がある」(英BBC放送)との見方すら浮上している。
核能力の除去と並び米国が重視したのが、近隣諸国の脅威となるミサイル・無人機能力の破壊だ。ヘグセス国防長官は8日、「イランのミサイル計画は事実上、壊滅状態だ」と強調した。
これに対しCNNテレビは、イランのミサイル発射機の約半数は無傷で、自爆型ドローンも数千機が残存していると報じた。シンクタンク「ソウファン・センター」は、イランが1日当たり最大20発のミサイルをイスラエルに撃ち込んでいると分析。回数こそ減ったものの、ミサイル・無人機攻撃の精度や効率は向上したとみる向きもある。
ホルムズ海峡の封鎖を主導するイラン海軍の壊滅という目標を巡っては、米軍のケイン統合参謀本部議長が艦艇150隻を撃沈し、機雷の95%超を破壊したと戦果を誇示した。ワシントン・ポスト紙は検証記事で、海軍に大打撃を与えたのは事実だと伝える一方、ミサイルや無人機も船舶の航行妨害の有力な手段だとし、軍事力に頼った封鎖解除の難しさを指摘した。
米国は、中東の親イラン勢力の大幅な弱体化も目的に挙げてきた。しかしこれに関しても、イスラエル軍が猛攻を加えたレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは武装解除に至っていない。ホルムズ海峡と並ぶ中東の海上輸送の要衝バベルマンデブ海峡で船舶を攻撃する能力を持つイエメンの武装組織フーシ派も健在だ。
〔写真説明〕トランプ米大統領=6日、ワシントン(EPA時事)