東京駅前に出現「“双子型”高速バスターミナル」の課題 迷わず来れる? 大きく離れた「地下A/B」名づけ方はほかに無かったの!?

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東京駅前の「バスターミナル東京八重洲」が第2期開業を迎えました。将来的に国内最大となる新ターミナルですが、乗り場が2か所に分かれていることによる"わかりにくさ”をいかに埋めるかが、成功のカギになるかもしれません。

分かりにくい? 国内最大バスターミナルが抱える課題

 2026年3月20日、東京駅前のバスターミナル東京八重洲が第2期開業を迎えました。29年度に予定される全面開業時には乗降バースが20に増え、新宿高速バスターミナル(愛称「バスタ新宿」)を上回り、国内最大の高速バス用ターミナルとなります。

 バスターミナル東京八重洲は、3つの再開発ビルの地下に3つのエリアに分けて整備され、それらが一体的に運営される計画です。第2期開業に合わせ、「TOFROM YAESU」地下の第2期エリアが「地下A」、開業済みの「東京ミッドタウン八重洲」地下の第1期エリアが「地下B」と名付けられました。

 新しい方がAというのは不思議ですが、全面開業時に地図の上方(北)から順にA→B→Cとなるためです。

 両エリアは、通りを挟んで向き合う2つの超高層ビルの地下に位置します。直接つながっておらず、徒歩移動なら地下街「ヤエチカ」を横切って4分ほどかかります。統一された車両管制・旅客案内システムを用い、ウェブ上で両者の出発状況を一覧でリアルタイムに確認できるとはいえ、物理的には2つのターミナルと言えます。

 なお、地下Bと地下C(仮称)は、地下2階の待合ロビーや車路が直接に結ばれるので、実質的には一体になりそうです。

 一つのマチ(駅周辺など)に複数の高速バスターミナルが立地する事例は、各地でみられます。東京駅八重洲口には、同ターミナル以外に東京駅JR高速バスターミナルと鉄鋼ビル内のバス乗り場がありますし、「バスタ新宿」開業前の新宿では、京王、小田急、JRなど各高速バス事業者が、バスターミナルや高速バス窓口を運営していました。

 JRや京王、小田急は誰が見ても企業名であり、京王百貨店と小田急百貨店が別々であるのと同様に、別の乗り場だということが直感的に伝わります。さらに名古屋の名鉄バスセンターや大阪梅田の阪急三番街高速バスターミナルは、名鉄系、阪急系の商業施設が並ぶ「名鉄ムラ」「阪急ムラ」の一角にあり、地元の人には地理的な概念も兼ねています。

 共同運行先など運営事業者以外の会社も発着するため、わかりづらいという問題もあるとはいえ、あえてバス事業者名を施設名称に冠することで、「複数のバスターミナルがあるぞ」と利用者が無意識に理解し、「その中のどこに行けばいいのか」を事前に調べるよう促す効果があったとも言えます。

 では今回の「地下A/地下B」という区分は正解でしょうか。

「ビル名にすればいいじゃない」の課題

 英字(A/B…)以外で容易に思いつくのが、ビルの名称を冠するケースです。地下Aは「バスターミナル東京八重洲(TOFROM YAESU)」、地下Bは「バスターミナル東京八重洲(東京ミッドタウン八重洲)」とするのです。

 この方法の強みは、通行人などに道を尋ねた際、相手がバスターミナルの存在を知らなくてもビル名を知っていれば案内してくれることです。しかし課題は、ビル名が開業直前まで発表されないことです。それまでバスターミナルの名称も決まらないというのでは開業準備が進みません。

 また、最近の再開発ビルはどこも同じような英語または造語の名称が付きます。バスの予約確認メールに「〇〇シティ」と書かれていても、駅や地下街で「←バスターミナル(△△タワー)」と案内サインがあれば、←の方向に行ってしまうリスクがあります。「複数のターミナルがある」ことが伝わりづらいのです。さらに、予約サイト上での文字数の制約といった課題もあります。

 その課題を解消するには、数字(第一/第二…)や方角(北/南…)という方法があります。「第一」があるなら「第二」もあるだろう、と、心の準備をしてもらえるからです。しかし、「〇〇ファーストタワー」の地下に「第2ターミナル」とか、「△△モール北館」の地下に「南ターミナル」というような名称の齟齬も避けなければなりません。

 複数のターミナルがあることを認識してもらえるよう、シーケンシャルな(法則性、連続性のある)名称とし、かつ、ビル名との齟齬を回避するには、英字が最も無難なのは確かなようです。

「前はこっちから出発したよな…」は早めに収束?

 次に実際の利用シーンを見てみましょう。バスターミナル東京八重洲からは、大別して2種類のバスが発着します。千葉県各地への短距離路線と、北は青森から西は福岡まで遠方へ向かう、主に夜行の長距離路線です。

 そのうち短距離路線は先着順自由席制なので、乗車バースを固定する必要があります。千葉県への路線のうち、木更津、君津方面などは地下Bに残る一方、銚子、東金、成東方面は乗り場が地下Aに移行しました。

 これらの路線は、通勤利用を含む沿線在住のリピーターが多くを占めます。事前にバス車内などで告知がなされているので、当面は戸惑う利用者もいるでしょうが、早めに収束すると考えられます。

 ただし、銚子線には観光客も乗車するうえ、一部の便は酒々井プレミアム・アウトレットを経由するので、観光客や買い物客は「前に乗った時」の記憶によって地下Bに行ってしまうという恐れがあります。

どんなに分かりやすくしても埋まらない「距離感」

 次に長距離路線ですが、特に京阪神、名古屋方面は多数の事業者、多数の便が同時発着するので、どちらかに集約するのは困難です。エリアの使い分けについて公式なアナウンスはなされていません。

 ただし、長距離路線はいずれも座席指定制で、ほぼ100%の利用者が事前にウェブ上で予約、決済を済ませています。理屈で言えば、予約確認メールの記載通りに、あるいはリンクが貼ってある地図アプリに従って来館すれば間違うことはありません。

 筆者(成定竜一・高速バスマーケティング研究所代表)の見る限り、周辺の施設は案内サインの整備に協力的なようです。JR東日本の東京駅構内では、地下A、地下Bの最寄りの改札口(Aは八重洲北口と八重洲中央口、Bは八重洲中央口と八重洲南口)が、降車系サイン(出口案内)に明記されています。ヤエチカでは、バスターミナルが定めた公式な色遣いまで用いてAとBの案内がなされています。

 ただ、だから間違わない、とも言えません。AとBが別々の場所だと認識していなければ、地下A発着の便なのに、「バスターミナル東京八重洲」という文字だけを見て深く考えず地下Bに来てしまう、という可能性は大いにあります。

 したがって、短距離路線、長距離路線を問わず、利用者に対し事前に「複数の乗り場がある」ことを認識し、そのつもりでサインを見てもらうように意識づけできるか、という点がキモになりそうです。

 リピーターの多い短距離路線では、バス車内のほか、現地(千葉県側)の乗車停留所でバス待ちの間に情報を見せることが重要になるでしょう。長距離路線では、各バス事業者の公式サイトに加え、予約サイトや比較サイトの協力が必要でしょう。

 難しいのは、AとBの距離感の伝え方です。例えば横浜駅東口バスターミナルの「A/B/C」は乗降島(プラットフォーム)の区分であり、階段が一本ずつ違うだけです。八重洲のA/Bはそれより遠い感じです。

 しかし、空港の「第1ターミナル/第2ターミナル」よりは相当近い印象です。バスターミナル東京八重洲の運営会社が京王であることを念頭に例え話をすれば「京王線新宿駅と、京王新線新宿駅」よりはちょっと近めでしょうか。距離感を伝える方法を模索する必要がありそうです。

そもそもなぜ「ひとつ」にしなかったの?

 最後に「なぜ、物理的にも一体のターミナルにできなかったのか」とよく尋ねられます。そうならなかった最大の理由は、東京駅正面の超一等地に、いくら地下とはいえ十分な広さの土地がなかったことだと考えられます。

 しかし、仮に20バースを1カ所に集約できる敷地があったとしても、集約が正解とは言い切れません。利用者は、バスターミナルのエントランスから自身の便が発着するバースまで構内をえんえんと歩かされることになるからです。

 さらに、20バース分の車両の出入り口が1カ所しかなかった場合、道路上の交通を妨げないようバスの発着便数が制約を受けてしまいます。大きな施設を作ったのに同時発着便数の上限が設定され、バースを余らせるようでは本末転倒です。

 千葉県からの通勤客から、夜行高速バスで「推し活」に向かう若年層まで多様な利用者が行きかう新ターミナル。東京駅正面という最高の立地にターミナルを整備してもらえた価値を業界各社がよく認識し、乗り入れバス事業者や予約サイトなど多くの関係者が協力して、わかりやすいバスターミナルが実現することを願っています。