名古屋駅、再開発計画に暗雲=人手不足、建築費高騰で見直し―にぎわい創出、喫緊の課題

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 名古屋駅周辺の大規模再開発計画に暗雲が立ち込めている。約8880億円を投じて高層複合ビルなどを建設する予定だったが、昨年12月に名古屋鉄道が見直しを発表した。「人材確保難」でゼネコン3社の共同事業体(JV)が入札を辞退したためだ。今年2月末には従来のスケジュールに沿って名鉄百貨店が閉店。人流に影響が出始める中、一帯のにぎわい創出は喫緊の課題だ。
 「全く想定しておらず、無念の思いでいっぱいだ」。名鉄の高崎裕樹社長は計画見直しを発表した記者会見で、こう悔しさをにじませた。昨春発表した再開発計画では、名鉄百貨店などを解体した上で、延べ床面積約52万平方メートルを活用してホテルや商業施設、オフィスなどが入る高層複合ビル2棟を建設。地下の名鉄名古屋駅の線路も4本に倍増させるとしていた。
 観光地へのアクセスも良い名古屋駅周辺は、インバウンド(訪日客)にも人気だ。今年9月にはアジアのスポーツの祭典、愛知・名古屋アジア大会が開催。観光需要の取り込みへ盛り上げていく矢先の誤算となった。
 名鉄によると、JV側は人材確保難で施工体制が構築できないと説明。工事費の見通しは、当初想定の倍近くに膨らんでいたという。建設コスト増加による再開発計画の中止や見直しは、JR九州の博多駅空中都市プロジェクトや新宿駅西南口の一部地区など全国で続発。名古屋市では、金山駅周辺の再開発計画も見直しに追い込まれた。
 建設物価調査会(東京)によると、高層ビルなどで用いられる建物構造のコストを示す指標の一つである工事原価指数が、名古屋市は2025年に137.5(15年=100)と、この10年で最高水準に達した。生コンクリートといった資材費を含む工事原価の上昇幅が大きくなっている。
 熟練技術者を中心に人手不足も深刻だ。名古屋市の建築事業者は「再開発の仕事は難易度が高く、(工期が)延びるリスクがあるとチャレンジしにくい」と吐露する。
 訪日客を対象とした愛知県の24年度の調査では、同県での観光の楽しみの1、2位は「グルメ・日本食」と「ショッピング」が占め、名古屋駅周辺の商業施設の充実は欠かせない。名鉄は26年度中に再開発の方向性を示す方針で、名古屋市も駅周辺のまちづくりの方向性を協議する官民合同の会議体を4月中に設置。県と市は資金負担を含む支援を検討する構えだ。新たな再開発計画の始動が急がれる。 
〔写真説明〕閉店した名鉄百貨店に面した地下通路=3月、名古屋市