【ワシントン時事】トランプ米大統領のイラン情勢に関する演説を受け、原油先物相場はまたも1バレル=100ドルの大台を突破した。早期停戦の実現を豪語してきたトランプ氏だが、原油供給難の解消に向けた「シナリオ不在」に失望が広がった。ホルムズ海峡の封鎖は既に幅広い資源価格を押し上げており、世界経済を巡る混乱の収束は見えないままだ。
トランプ氏は1日夜の演説で、戦闘が終結すれば海峡が開放され、「石油輸送は再開し、ガソリン価格も急速に下落する」との楽観的な見方を表明。原油高に伴う国内のガソリン価格高騰は「短期的だ」と強調した。だが、米原油先物相場は演説前の98ドル前後から急伸、一時108ドル台に乗せた。
演説では、高止まりする原油相場やガソリン高騰に対するトランプ氏の焦りが透けた。トランプ氏が物価高対策で国民へのアピール材料として使い続けてきたのがガソリン価格の下落だったが、直近では1ガロン=4ドル台と約3年半ぶりの高値を記録。トランプ氏はイランと合意に至らなければエネルギーインフラへの大規模な攻撃に出ると威圧しており、先行き不透明感は根強い。
価格高騰は原油だけでなく、肥料や小麦、アルミニウムなど幅広い資源にも及んでいる。英金融大手HSBCは1日公表のリポートで、3月の商品価格が平均で前月比14%上昇と、2022年のロシアのウクライナ侵攻開始以降で「最大の伸びとなった」と指摘した。
世界へ供給される肥料の3分の1はホルムズ海峡経由だ。今春の北半球の作付けに影響が出るのは必至で、秋の収穫減が懸念されている。
イランの報復攻撃は、アラブ首長国連邦(UAE)やバーレーンのアルミ精錬施設にも及んだ。カタールは半導体製造に不可欠なヘリウム供給で世界シェアの3分の1を占める。これらの生産がいつ正常化できるかは定かではない。
22年のエネルギーと食料の高騰時、多くの低所得国で債務問題が深刻化した。イラン紛争が長引くにつれ、混乱再来への懸念が強まっている。国際通貨基金(IMF)は「肥料や食料価格の急上昇は経済問題だけでなく、社会、政治問題を招く」と警告している。