FIFAワールドカップ2026まで約2か月半。森保ジャパンに残されたテストマッチは3試合しかない。その一つであるスコットランド戦が、グラスゴーのハムデン・パークで行われる。
森保一監督は前日会見で「明日はアウェイで非常に厳しい戦いになると思いますが、W杯に向けての戦術的な部分、チーム全体の経験値を上げていくことも考えながら、勝利を目指してベストを尽くしたい」と内容と結果を重視する意向を表明。同時に「交代枠11人というレギュレーションなので、先発・途中交代という部分でシャドーのポジション以外にもいろいろ試したい」と発言した。積極的なトライに打って出るつもりのようだ。
指揮官の考えに沿って、ベテラン・伊東純也も“二刀流”で勝負していくことになる。おそらくスコットランド戦は、本職の右ウイングバックでスタートするだろう。対面にはスコットランドの主将アンドリュー・ロバートソンが陣取っていて、攻略に多少なりとも苦戦するかもしれない。それでもスピードと技術、戦術眼を併せ持つ伊東ならば、小さな隙を突いていくことは十分可能だ。
「どんな相手でもやることは変えないので、周りを使える時は使って、自分で行けると思ったら行く。相手より自分主体で行けたらいいかなと思います」。伊東は常に自らアクションを起こしつつ、堂々と挑んでいく構えだ。
一方で試合途中、あるいは次戦のイングランド代表戦では、シャドーでプレーする時間帯も出てくるだろう。思い返せば、2025年10月のブラジル代表戦でも後半からシャドーに入って2アシストを記録。歴史的勝利の原動力となっている。そのマルチな能力は森保監督にとっても心強い材料。チームの大きな支えになっているに違いない。
「三笘(薫)であったり、純也であったりというところは、個の力で局面を打開して得点を奪うことができる。彼らにはより局面の突破能力を出してもらいたいと思っています」と指揮官は会見でも期待を示したが、伊東本人も強豪相手のシャドーにおける突破の具体的イメージを持ち合せているという。
「相手が強ければ強くなるほど、攻められる時間も長くなるので、裏にスペースが空いてきたりする。カウンターだったり、速い攻撃はシャドーにいた方ができるというのは、ブラジル戦なんかもあった。自分も含めて、今の代表は外と中の両方できる選手が多いので、臨機応変にやっていければいいと思いますね」と前向きに話していた。
実際に前所属のスタッド・ランス、現所属のゲンクでも最前線や中央寄りの位置でプレーするケースは何度もあった。そこでゴールに直結できる仕事も見せてきた。得点力に秀でる南野拓実と久保建英が揃って不在となる中、自らチャンスを作り、決定機を仕留められる伊東純也という存在というのは極めて重要だ。まさに“日本攻撃陣の生命線”と言っても過言ではない。今回のW杯でも圧倒的な存在価値を力強く示してもらわなければならないのだ。
3月9日に33歳の誕生日を迎え、年齢的には今回の代表メンバーでは谷口彰悟に続く2番目になった。本人も「もう33になったのかという感じです」と驚き半分にコメントしていたが、今のところパフォーマンスに全く衰えは感じられない。
「10月のケガの後、今年に入って復帰して、試合もずっと出ているので、コンディションもよくなってきていると思います。クラブではベルギーリーグとEL(UEFAヨーロッパリーグ)もあって連戦でしたけど、前線はローテーションしていたので無理なく戦えた。そういう意味でもコンディションはいいと思います」とメリハリをつけながら、自身の状態を維持しているという。それでも、本人の中では「次のW杯が最後になるかもしれない」という思いがあるようだ。
確かに過去のW杯戦士を見ても、本田圭佑、乾貴士、香川真司といった看板プレーヤーたちも、30代前半で代表キャリアに一区切りをつけている。30代半ば以降もトップ・オブ・トップに君臨し続けた日本人アタッカーはなかなかいない。伊東はその範疇に入らないのかもしれないが、いずれにしても、ここからグングンと調子を上げ、集大成となる大舞台を最高の状態で迎えてほしい。そのために、まずはスコットランド戦でいい布石を打ちたいところだ。
「今はW杯というよりは、いい相手とやれるということで、個人的に結果を出すことしか考えていないですね。上を目指している分、一つひとつが大事になってくると思いますし、チームとしてまとまることも大事。今は若い選手が沢山来てチャンスもありますし、いい競争でチームを底上げできればいいかなと思います」
チームのことにも気を配る伊東。招集メンバーでは最多キャップ数を誇るエースが士気を高めると同時に、日本を勝たせる大仕事をしてくれれば理想的。我々はこの14番から目が離せない。
取材・文=元川悦子