ホンダと日産「どっちが苦しい?」 2社で全く異なる“赤字6000億円超”の実態 答えは「いいクルマ」次第?

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ホンダと日産が、ともに6000億円級の巨額赤字となる見通しです。しかし、その中身や理由は両社で全く異なります。それぞれが置かれている状況とは、どのような厳しさを持っているのでしょうか。

同じ「6000億円赤字」でも理由は真逆?

 ホンダは2026(令和8)年3月12日、四輪車の電動化戦略の見直しを発表しました。BEV(バッテリー式電気自動車)への積極的な移行を進める方針を事実上撤回し、アメリカで生産する予定であったBEV「Honda 0」シリーズのうち「SUV」「Saloon」の2モデルと、同じくBEVの「Acura RSX」の計3モデルについて、開発・発売を中止するという内容です。

 さらにホンダによると、方針見直しに伴う生産設備の清算などにより、最大で2兆5000億円という巨額の損失が試算されているとのこと。2025年度の業績見通しは当然ながら大赤字で、2026年3月期の連結最終損益は最大で約6900億円となる見通しだとしています。

 ホンダが黒字予想から一気に赤字へ転落したのも驚きですが、同じく巨額の赤字が予想されているのが日産です。2024年度に最終損益が約6700億円の赤字となり、経営再建に取り組んでいる日産ですが、2025年度も約6500億円の赤字となる見通しを発表しています。

 両社は2024年末に経営統合に向けた協議を開始したものの、わずか3か月後の2025年2月に協議が破談となったのも記憶に新しいところです。今回、奇しくも同じ6000億円レベルの赤字が見込まれる両社ですが、その“中身”は大きく異なります。

 ホンダが赤字に転落したのは、世の中のEV普及の速さに賭け、積極的な投資を行ったことが理由です。結果として予想は外れましたが、本格的な生産・販売を始める前に撤退を決めたのは、出血を最小限に留める判断だったともいえるでしょう。

 一方、日産の赤字は慢性的な経営不振によるものです。すでに日産は2024年度、2020年度(▲4500億円)、2019年度(▲6700億円)と過去10年間で3度も数千億円規模の赤字決算に陥っています。2025年度も巨額の赤字は避けられない状況ですが、今期は生産拠点や設備、人員の大規模リストラという大ナタを振るっているだけに、今後は長く続く苦境から脱出できるのかが注目されます。

「身の丈に合った体制へ」日産に光が見え始めた!

 そもそも日産は2010年代後半、世界で年間500万台以上のクルマを売っていた会社です。ところが現在、年間での世界販売台数は320~330万台規模まで落ち込んでいます。

 つまり、2010年代に比べて4割ほど生産能力を落とさなければ計算が合いません。まずは身の丈に合った体制へと立て直す必要がありますから、今回のリストラ策は、日産にとって避けて通れない試練だったのかもしれません。

 そして、日産には苦境の先に、わずかながら光が見え始めています。最新の業績となる2025年度第3四半期決算を見ると、世界全体での販売台数こそ落ちているものの、北米での成績はほぼ横ばい、中国ではプラス12.7%と上向いています。

 これはレンタカー販売をはじめ、数は稼げるもののブランド力を棄損する「フリート販売」を抑えつつ、魅力的な新車を投入するという、直近の再建策の効果がジワジワと表れてきていると捉えられます。

 今後は不調である日本と欧州市場に対し、どのようなテコ入れを行っていくかが重要になるのではないでしょうか。魅力的な新型車の投入などを期待したいところです。

では「ホンダは安泰」と言えるのか?

 では、日産に比べてホンダが安泰かといえば、意外とそうではありません。出血を最小限に抑えたとはいえ、全体の損失額は最大2兆5000億円という途方もない数字ですから、今回の方針見直しの影響は今期だけでなく来年以降も尾を引くはずです。

 また、ホンダも2010年代後半には世界で年間500万台以上の販売規模でしたが、近年は日産同様、約340万台レベルにまで落ち込んでおり、2020年代に入ってからは販売台数を減らし続けています。

 ホンダの場合は二輪事業が安定して儲かっているため、会社全体としては目立って業績が悪いように見えません。しかし四輪事業に注目すれば、それほど成功しているわけでもないのです。

 そして今回の四輪車における電動化戦略の見直しは、大きく失敗しそうな3モデルのBEVの計画をストップしただけ。つまりマイナスを小さくしただけで、儲けを直接作り出す施策ではありません。

 新たな収益を生み出すには、今回の戦略見直しとは別で、純エンジン車やハイブリッド車の新たなヒットモデルが必要になるでしょう。そうした意味で、新たな方針のもと開発される新型車には大きな期待がかかります。注目すべきは、ホンダが今後どんな魅力的な新車を投入するかではないかと、筆者(鈴木ケンイチ:モータージャーナリスト)は考えます。