フランス空軍のA400M「アトラス」輸送機が、重機による整備が一切行われていない北極圏の海氷上に着陸するという快挙を成し遂げました。100トンを超える巨体は、なぜ、そしてどのようにして“天然の滑走路”に降り立つことができたのでしょうか。
100トンの巨体が“天然の滑走路”へ
フランス空軍の空軍軍事航空専門センター(CEAM)は2026年3月17日、大型輸送機A400M「アトラス」をグリーンランド北部の北極圏内にある海氷上に着陸させることに成功したと発表しました。これは、同機にとって史上初の試みです。
着陸が実施されたのは、北緯82度に位置するグリーンランド北部のカップ・ハラルド・モルトケ・フィヨルド。そこに浮かぶ全長1400m未満という短い海氷上の滑走路へ、重量が100トンを超えるA400Mは見事に着陸しました。この滑走路は海岸からわずか150mの場所にあり、通常の空港のように重機で整備されたものではありません。部分的に雪が積もった、全くの天然氷面という過酷な条件下での挑戦だったといいます。
また、CEAMによると、この史上初の試みを支えるため、フランス陸軍の第25航空工兵連隊(25RGA)に所属する「簡易滑走路」の専門チームが、デンマーク軍の協力を得て事前に現地入りし、数週間前から着陸候補地の選定と偵察を行っていたといいます。
さらに、今回は単なる着陸だけではなく、同地で実施されていた「Uppick 2026」演習に参加していた山岳コマンド部隊の完全な回収作戦も行われました。A400Mは、スノーモービル7台とそれに付随するソリ、そして11名の隊員を収容して離陸したのです。この一連の行動により、空港のようなインフラが全く存在しない孤立した北極圏においても、部隊を迅速に展開・回収できる能力を実証したといえます。
近年、北極圏におけるロシアの脅威を受けて、欧州各国は同地域における防衛態勢強化に乗り出しています。今回のA400Mによる離着陸試験は、そうした背景によるものと考えられます。