日米首脳会談「対中」後景に=中東一色、外れた思惑

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 【ワシントン時事】19日の日米首脳会談では高市早苗首相が目指したトランプ米大統領との中国に関する認識の擦り合わせが後景に退いた。首相は中国をにらんで強固な日米同盟をアピールしたい考えだったが、イラン情勢悪化を受けた自衛隊派遣問題が焦点に浮上。成り行き次第では日米に溝ができ、中国を利することになりかねない皮肉な展開となった。
 「あらゆる分野で日米関係を強化する機会にしたい。機中では会談に向けた準備をしっかり行う」。首相は18日に羽田空港で政府専用機に乗り込んだ後、X(旧ツイッター)でこう強調。ただ、搭乗直前にはイラン情勢への対応を記者団に真っ先に説明し、会談の焦点の変化を印象付けた。
 首相がこの時期の訪米でトランプ氏と合意したのは1月2日の電話会談だ。首相は当時、台湾有事を巡る国会答弁に対する中国の猛反発に直面。日中関係が急速に冷え込む中、4月の訪中を調整していたトランプ氏と事前に会談し、日本の立場を打ち込む狙いがあった。
 当時のトランプ氏が日中の確執について沈黙を守っていたため、「日本の頭越しに中国とディール(取引)し、はしごを外すつもりかもしれない」(日本政府関係者)との危機感もあった。
 トランプ氏は最近、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記との対話に意欲を見せており、会談が近づくにつれ「拉致問題解決への支援を働き掛けるチャンス」(政府高官)との期待も強めていた。
 しかし、米国とイスラエルによるイラン攻撃で環境は一変した。「トランプ氏の頭はイランでいっぱい」(日米関係筋)に。会談は「イラン一色」になり、トランプ氏の訪中も4月下旬以降に延期された。
 日本外務省幹部は「本来やりたかったことが大幅に圧縮される結果になった」と嘆く。日本政府関係者は「中東の議論をしつつ日米の話題に持っていく。そのための会談だ」と語るが、「トランプ氏はすぐに忘れてしまう。1カ月の訪中延期は残念だ」と本音を隠さなかった。
 イラン情勢が前面に出てきたことで、首相は逆に会談で対中リスクを抱えることになった。トランプ氏が日本の貢献策に納得しなければ、日米の足並みの乱れが露呈する恐れも否定できないからだ。日本外務省関係者は「結果的にタイミングは最悪だったかもしれない」と漏らした。 
〔写真説明〕日米首脳会談のため、ワシントン郊外のアンドルーズ空軍基地に到着した高市早苗首相(中央)=18日午後(代表撮影・時事)