レギュラーガソリンの値上がりなどが問題となっています。ほかの物品であれば、値上がりする前に買いだめをすることも可能な場合がありますが、ガソリンについてはそれが不可能なのはなぜなのでしょう。
ガソリン携行に関する細かいルール
国際的な問題などで原油価格の高騰が懸念される昨今、私生活にも影響が及び、レギュラーガソリンの値上がりなどが問題となっています。ほかの物品であれば、値上がりする前に買いだめをすることも可能な場合がありますが、ガソリンについてはそれが不可能です。なぜでしょうか。
石油元売り会社の関係者によると、一般家庭などで許可なく貯蔵・保管できるガソリンの量は、合計40リットル未満と消防法で定められています。ガソリンは「危険物」の「第4類第1石油類」に分類されるためです。違反した場合は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
そもそも、ガソリンをクルマ以外に給油するための携行容器にも厳しい規定があります。安全性能基準をクリアした携行缶を使用する必要があり、セルフサービスのガソリンスタンドであっても、給油はスタンドのスタッフが行います。また、携行缶を持参しても給油を断られるケースが増えています。
携行缶での給油を拒否されるケースが増えたのは、2020年2月に施行された改正消防法の影響です。この改正法により、購入者の免許証などによる本人確認や使用目的の確認、さらに販売記録の作成が義務付けられました。
改正のきっかけとなったのは、2019年に京都で発生した放火事件です。この事件では、大量のガソリンをポリタンクに入れて悪用し、建物にまいて火をつけたため、ガソリンが爆発的に燃え、多くの死傷者が出ました。
前述の関係者によると、そのため現在では携行缶などにガソリンを入れて販売する際の本人確認のほか、使用目的なども細かく確認されるとのことです。
さらに、貯蔵には性能試験に合格した22リットル以下の密閉可能な金属性容器が必要です。場合によっては、10リットル以下の試験合格済みプラスチック容器に給油できるスタンドもあります。ただし、「石油元売り会社の多くは、容器で購入する場合は事前に店舗へ問い合わせることを推奨してるケースが多いです」と関係者は話します。
なお、ガソリンの持ち運びが2020年2月の法改正によって急に厳しくなったわけではなく、もともとほかの燃料に比べて厳しい制限が設けられていました。これは、ガソリンが軽油や灯油に比べてはるかに危険であるためです。
ちょっとした静電気でも引火の可能性
石油元売り会社の関係者は、次のように説明します。「レギュラーガソリンやハイオクガソリンは、マイナス40度という低温でも気化してしまう非常に揮発性の高い可燃物です。そのため、ベーパー(蒸気)が発生します。この蒸気は空気よりも約3~4倍重く、広く拡散します。そして、わずかな火花でも引火してしまう危険性があります」。
しかも、少量であっても強く燃え上がります。大量の場合は爆発的に炎上し、被害を広範囲に広げる危険性もあるため、携行や貯蔵には厳しい制限が設けられているのです。
一方、軽油の引火点は60~100度とされており、布や紙に染み込んだ状態などの例外を除けば、ガソリンに比べて液体そのものは可燃性の蒸気を発生しにくく、燃えにくいとされています。
実は、セルフサービスのガソリンスタンドで、ガソリン計量器に「静電気除去シート」として丸く黒いパッドが取り付けられているのも、ガソリンへの引火事故を防ぐためです。特に乾燥しやすい冬場は静電気が発生しやすく、乾燥した指先などで金属製品に触れると、パチッと火花が出ることがあります。ガソリンの蒸気に引火すれば大事故につながるため、このシートで静電気を除去する必要があるのです。
なお、ガソリンスタンドの店員は、帯電防止に優れた衣服や靴を着用しており、業務中にも水をまいたり金属製品に触れたりして、日常動作で静電気の発生を抑制しています。そのため、除去シートに触れなくても、安全に給油を行うことができます。
つまり、知識のない一般の人が設備の整っていない場所にガソリンを大量に保管するのは極めて危険であるという訳です。買いだめは値上がり以上のリスクを生む可能性が高いので絶対にやめた方がいいです。