中国・北京郊外で暖房難=大気汚染対策でしわ寄せ―かすむ「共同富裕」

人工衛星打ち上げ 世界的に増加

 【北京時事】中国の首都・北京に隣接する河北省で、所得の少ない農民らが満足に暖房を使えない事態が深刻化している。大気汚染対策で暖房用燃料を石炭から天然ガスに切り替えたところ、北京の空気の質が大幅に改善した一方で、農村の暖房費負担は急上昇。開催中の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、習近平政権は「都市と農村の格差縮小」を盛り込んだ第15次5カ年計画(2026~30年)を示したが、農民の苦境に手を打てていないのが実情だ。
 北京市南西部に接する河北省保定市※(※サンズイに豕の左部分にテン)州の農村。2月中旬に訪ねると、気温4度の空の下、厚着をした老人が道端に集まっていた。「暖房費節約のため日なたぼっこをしている」。談笑していた女性(81)は、そう話した。
 中国政府は深刻化した大気汚染を受け、北京やその周辺などで石炭の使用を制限。河北省政府も17年から、暖房用燃料の天然ガスへの転換に本格的に乗り出した。この村でもほとんどの家にガス管が整備され、ガス暖房器具の導入が進んだ。
 しかし、中国メディアによると、供給コストがかさむこともあり、同省農村部のガス料金は北京市内より高い。また、ガス暖房の導入を促すために設けられた関連補助金を地元政府が段階的に減額。補助金の額は当初の最大1000元(約2万3000円)前後から200元(約4600円)程度に減り、農民の負担は重くなっている。
 農業を営む女性(59)によると、暖房費は石炭なら一冬2000元(約4万6000円)程度で済んだが、ガスは4000元(約9万2000円)以上かかる。農業で得る年収は約5000元(約11万5000円)に過ぎず、地元の補助金200元では焼け石に水。「暖房は夜に少し使うだけ。あとはトウモロコシの芯やまきを燃やしてしのいでいる」と打ち明ける。石炭を使うと、街頭に設置されたカメラで村内を監視している村幹部が煙で気付き、使用をやめるように指示されるという。
 北京市政府によると、25年に大気の質が「優良」と判断された日は観測史上初めて8割を超えた。「深刻な汚染」を記録した日は1日だけで、市幹部は「青空が当たり前になった」と胸を張る。
 「確かに空気は良くなったが、農民の稼ぎでは暖房がほとんど使えなくなった」。村民の男性は、そう訴える。貧しい農民に負担を押し付け首都の快晴を実現している形で、習政権が掲げる「共同富裕(共に豊かになる)」の看板はかすんでいる。 
〔写真説明〕道端に集まり、日なたぼっこする老人=2月12日、中国河北省保定市
〔写真説明〕中国河北省保定市の民家に設置されたガス暖房器具=2月12日
〔写真説明〕新たに整備された暖房用のガス管の下にたきぎが積まれた民家=2月12日、中国河北省保定市