原油100ドル、世界に衝撃=物価高と景気低迷同時進行も

人工衛星打ち上げ 世界的に増加

 【ワシントン、ニューヨーク時事】原油先物相場の国際指標、米国産標準油種WTIが一時、1バレル=100ドルの大台を突破した。きっかけとなった米国とイスラエルの対イラン軍事作戦に関し、トランプ米大統領は「間もなく終わる」と発言。だが、油価高騰が世界経済に響き始める中、日米欧の主要国は石油備蓄の協調放出を検討しており、インフレ加速と景気低迷を同時進行させかねない原油高の長期化に警戒を強めている。
 ◇不透明感晴れず
 9日の米株式市場は大荒れの展開となった。原油急騰による景気悪化懸念を背景に、ダウ工業株30種平均の下げ幅は900ドルに迫った。その後、トランプ氏が米テレビに「戦争はほぼ終わったと思う」と語ると、原油相場は81ドル台まで下がり、株価も上昇に転じた。
 ただ、市場参加者は「戦闘が(本当に)終わるのか見極めなければいけない」(日系証券)と指摘。先行き不透明感は晴れず、「株価が上値を追う展開にはならない」とみる。
 既に原油相場は年初から水準を大きく切り上げている。米金融大手ゴールドマン・サックスは油価が100ドルを一時的にでも付けた場合、世界のインフレ率が0.7ポイント上昇、成長率が0.4ポイント押し下げられると推計した。
 ◇G7、備蓄放出の構え
 原油輸送の要衝ホルムズ海峡は事実上封鎖されており、欧州やアジアなどへの原油、液化天然ガス(LNG)の供給が滞る危機的状況が続く。先進7カ国(G7)財務相は9日、緊急会合を開催し、「備蓄放出など世界のエネルギー供給支援を含むあらゆる措置を講じる準備がある」と強調。近くエネルギー相会合も開き、具体策を議論する見通しだ。
 トランプ氏は9日の記者会見で、ロシア産原油の制裁を一部解除し、油価引き下げにつなげる考えを示した。備蓄の協調放出以外にも、原油先物市場への介入などを視野に入れているとされる。11月の中間選挙を控え、生活コスト高への根強い不満がトランプ氏の支持率低迷に直結しており、価格抑制に配慮せざるを得ない。
 トランプ氏が軍事作戦の早期終結の可能性を示唆した一方、イラン側は報復を強める方針を表明、混乱収束の見通しは立たないままだ。
 ロシアのウクライナ侵攻で原油価格が100ドル超となった2022年、コロナ禍からの回復が遅れていたアフリカなどの低所得国は相次いで債務危機に陥った。国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は9日、東京で講演し、「対立がすぐに終わっても、やがて新たなショックが起きる」と警告。各国に「思いもよらない事態を想定し、備えるべきだ」と訴えた。 
〔写真説明〕9日、米フロリダ州で記者会見するトランプ大統領(AFP時事)