1月の実質賃金が13カ月ぶりにプラスに転じた。賃上げの浸透に加え、食料品を中心に物価上昇の勢いが鈍化したためだ。ただ、足元ではイラン情勢の緊迫化を受けて原油価格が急騰し、円安も進行。輸入物価の上昇を通じた資源インフレの再燃リスクが高まっており、実質賃金のプラス定着は厳しい状況にある。
厚生労働省が9日発表した1月の毎月勤労統計調査によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は、前年同月比1.4%増となった。物価上昇率の鈍化で「実質賃金は2、3月もプラス圏で推移する可能性が高い」(第一生命経済研究所の新家義貴シニアエグゼクティブエコノミスト)との見方が出ている。
問題は、実質賃金が安定的にプラス圏で定着できるかだ。2026年春闘では、連合の傘下労働組合による賃上げ要求は、平均5.94%と高い水準を維持。大企業では、組合の要求に満額回答で応じるケースも相次ぎ、26年の賃上げ率は「5%程度の高い水準が続く」(エコノミスト)と予想されている。
ただ、イランによる原油輸送の要衝ホルムズ海峡の事実上封鎖で、原油輸入の9割超を中東地域に依存する日本経済への打撃は避けられない。原油先物市場では、米国産標準油種WTIが一時1バレル=119ドルまで急騰。さらに資源輸入国である日本の貿易赤字拡大が懸念され、円相場は急落した。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「日本は、原油高と円安、景気減速の三重苦に直面し始めた」と指摘する。
原油高と円安の同時進行は、輸送・製造コストの上昇を招き、幅広い品目の値上がりにつながる。新家氏は、1バレル=100ドルを超える原油高が長期化すれば、「26年度の実質賃金はマイナスとなる可能性が高い」とみている。