【カイロ時事】米イスラエルとイランの軍事衝突の戦火が中東の広範囲に拡大する中、イエメンの親イラン武装組織フーシ派は参戦の構えを見せつつも、事態を静観している。識者からは交戦長期化に備えて兵力を温存しているとの見方が出ており、参戦すれば、ペルシャ湾のホルムズ海峡に続いて紅海も封鎖状態に陥る恐れがある。
◇過去に船舶攻撃
フーシ派指導者のアブデルマリク・フーシ氏は5日、テレビ演説で「指は引き金にある」と述べて臨戦態勢にあることを強調。米国やイスラエルのみならず、米軍を支援しているとして湾岸諸国に対する敵意もあらわにした。ただ、これまでのところ、イラン情勢に連動したフーシ派の軍事行動は確認できていない。
フーシ派は2010年代、イエメン情勢の混乱に乗じて勢力を拡大した武装組織。15年に首都サヌアを制圧し、主要港湾都市のホデイダなど北西部で実権を握る。イランはこれまで、フーシ派を主に軍事面で支援してきた。
イスラエルが23年10月、パレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスの掃討を目的に大規模軍事作戦を開始すると、フーシ派はイスラエルへのミサイル・無人機攻撃を実施。紅海とアラビア海のアデン湾を結ぶ要衝バベルマンデブ海峡の一帯などで船舶を攻撃した。
◇スエズ運河機能不全も
フーシ派を巡っては、後ろ盾であるイランの弱体化が進めば自らの権力基盤も揺らぎかねず、参戦は「時間の問題」との見方が強い。現時点で、行動を起こしていない理由について、イエメンの政治評論家サダム・ヘレイビ氏は中東の衛星テレビ局アルジャジーラに「(イランは)一度にすべてのカードを切るつもりはなく、(長期戦に備え)フーシ派を残している」と分析する。
フーシ派が攻撃に出る場合、イスラエルに加え、以前も標的にしたことがあるアラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアの石油施設を狙う公算が大きい。
サウジでは米イスラエルとイランの交戦激化でペルシャ湾のホルムズ海峡が閉鎖状態に陥ったことを受け、原油を紅海から輸出するルートに変更する動きが出ている。しかし、フーシ派の参戦で紅海での通航が困難となれば、紅海と地中海を結ぶスエズ運河も機能不全に陥り、世界の海運にさらなる大混乱をもたらしかねない状況だ。
〔写真説明〕イエメンの首都サヌアで、米イスラエルのイラン攻撃に抗議する親イラン武装組織フーシ派支持者=6日(EPA時事)