【ソウル時事】米イスラエル両軍がイランの最高指導者ハメネイ師を殺害した軍事作戦を受け、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が「強い衝撃」を受けている可能性があると専門家は指摘する。北朝鮮の指導部排除を狙う「斬首作戦」に対する抑止力確保のため、北朝鮮が核兵器への固執を一段と強めるとの懸念も広がる。
「最も醜悪な主権侵害だ」。北朝鮮外務省報道官は1日、米イスラエルのイラン攻撃をこう非難し、南米ベネズエラのマドゥロ大統領拘束に続く軍事作戦への警戒感をあらわにした。韓国政府系シンクタンク世宗研究所の鄭成長副所長は「北朝鮮は、トランプ米大統領を本当に予測困難な人物と見ているだろう」と説明。ただ、事実上の核兵器保有国である北朝鮮への同様の攻撃は「不可能だ」と分析した。
正恩氏は2月下旬の党大会で、米国との対話に含みを持たせていたが、今回のイラン攻撃を受け米国への不信感が一層高まり、対話再開はより難しくなりそうだ。
北朝鮮は核を体制の「保証」に不可欠と位置付け、米本土を狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発も進めてきた。2022年には核使用の条件を定めた法令で、正恩氏らへの攻撃には「核打撃が自動的に即時断行される」と規定した。
米シンクタンク「韓米経済研究所」のエレン・キム学術部長は講演で、日韓両国が「北朝鮮の核と軍事的脅威の最前線にある」と述べ、米国の軍事作戦のリスクはイランより高いと強調。中国やロシアの「後ろ盾」もあり「戦略的にも危険な選択だ」と解説した。
1994年にクリントン米大統領(当時)が北朝鮮の核施設への空爆を検討した際には、金泳三韓国大統領(同)が反対した。米軍は当時、全面戦争となれば100万人規模の死者が出ると推測していたとされる。
その後の北朝鮮での核ミサイル開発の進展により、危険性はさらに高まっている。韓国の李在明大統領は5日、「(イランの)次は北朝鮮だと変なことを言う人もいる」と語り、北朝鮮への斬首作戦は現実味がないという認識を示した。
〔写真説明〕北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記=1日撮影(朝鮮中央通信より)(AFP時事)