国鉄時代の電気機関車「完全引退」すでにカウントダウン!? 「新しい機関車で統一したい」 “最後の砦”になる路線とは?

人類が月面に再び立つ日も近い?

国鉄形の電気機関車(EL)の引退が相次いでいます。その“最後の砦”となる路線では、現役を続行するものの、引退へのカウントダウンが始まっているようです。

JR東日本の旅客列車から引退「EF64」

 国鉄時代に登場した電気機関車(EL)が、老朽化に伴って引退が相次いでいます。2025年6月に引退した豪華寝台客車「カシオペア」E26系の牽引などに活用してきたJR東日本でも役目を終え、風前のともしびとなってきました。

 JR東日本は2025年11月24日、新潟車両センター所属の国鉄型EL、EF81形とEF64形の引退を記念して信越本線の長岡(新潟県長岡市)―新津(新潟市)間で臨時快速「ありがとうEL号」を運行しました。新津―会津若松(福島県会津若松市)間の蒸気機関車(SL)列車「SLばんえつ物語」に使っている12系客車7両が充当され、新津側に交直流ELのEF81形140号機、長岡側に直流ELのEF64形1030号機をつなぎました。

 JR東日本幹部によると、同社が擁する従来型電気機関車の「旅客列車として営業運転する最後の機会になった」そうです。

 一方、JR貨物には今でも国鉄型ELだけで運用している“最後の砦”があります。JR貨物を取材し、2026年3月14日のダイヤ改正での行方を尋ねました。

貨物列車は「100%国鉄形で牽引」する路線とは?

 国鉄形ELが牽引する貨物列車だけが走っているのは、JR西日本の伯備線です。JR貨物によると、EF64形がコンテナを載せる貨車12両を引っ張り、岡山貨物ターミナルと伯耆大山駅(鳥取県米子市)の間を1日3往復しています。

 運用に付いているEF64形は愛知機関区(愛知県稲沢市)に所属しています。JR貨物に残っているEF64形はいずれも愛知機関区所属の23両があり、うち最も古い1981年製は9両(1020~1028号機)。JR貨物は濃い青色で先頭部の下半分だけクリーム色にしたオリジナル色(国鉄色)を活用してきたほか、一部は白色と紺色の通称「JR貨物更新色」に塗り替えるなどしていました。

 関係筋によると、伯耆大山から岡山貨物ターミナルへ向かう列車で運ばれている主要製品は製紙大手、王子製紙米子工場(米子市)で生産されている紙製品です。米子工場の生産品目には本や雑誌などに使われる出版用紙、カタログやチラシなどに利用される印刷用紙、光沢が強くて滑らかなのが特色の高級印刷用紙であるキャスト紙などがあります。

 米子工場と伯耆大山付近の間には専用線が敷かれており、専用線では入換機関車(スイッチャー)がコンテナ貨車を運搬しています。

 王子グループの物流企業、王子物流は「物流の手段をトラック輸送から海上輸送・鉄道輸送へと切り替えるモーダルシフトを進めており、(王子製紙)米子工場から大阪、東京への輸送は既に鉄道に切り替えています」と説明しています。米子工場の製品輸送に占める鉄道の割合は約半分に達しているそうです。

特急も電車も国鉄形が消滅!?

 EF64形が100%牽引している岡山貨物ターミナル―伯耆大山間の貨物列車が走る伯備線では、岡山と出雲市(島根県出雲市)をつなぐJR西日本の特急「やくも」が運行されています。

「やくも」では、国鉄時代に製造された特急形電車381系が最後まで残っていました。381系とEF64形、そして普通電車に使われる115系が長らく活躍する“国鉄形天国”の様相を呈し、沿線には大勢の撮り鉄が押しかけてきました。

 しかし、381系は2024年6月15日に定期運行を終え、新型車両273系にバトンタッチしました。岡山地区の115系は新造された227系「Urara(うらら)」への置き換えが進み、2026年3月14日のダイヤ改正以降は伯備線内の運用区間も延長。伯備線から山陰本線に続く電化区間の末端である西出雲駅(島根県出雲市)まで乗り入れるようになります。

 EF64形を巡っては、ダイヤ改正を機に中央西線の名古屋貨物ターミナルと南松本駅(長野県松本市)を結ぶ定期列車から退役します。老朽化が理由で、上越線で使われてきた直流電気機関車EH200形で置き換えます。

国鉄形「完全引退」カウントダウンは始まっている!

 筆者はJR貨物に対し、2026年3月14日のダイヤ改正後も伯備線の岡山貨物ターミナル―伯耆大山間のEF64形を置き換えるのかどうかを訪ねました。その回答は「ダイヤ改正後も残ります」というものでした。

 併せて、ダイヤ改正後は岡山貨物ターミナル―伯耆大山間が国鉄形ELによる定期列車が残る唯一の区間になることも判明しました。

 他の国鉄形ELの定期列車が現役の区間では、中央西線の定期列車からEF64形が消滅するのに加え、越谷貨物ターミナル(埼玉県越谷市)―百済貨物ターミナル(大阪市)の定期列車で走ってきた直流ELのEF66形も「ダイヤ改正後は臨時列車用になる」(JR貨物)ためです。

 すなわち、ダイヤ改正後は伯備線が、JR貨物の国鉄形ELが定期列車として走る文字通り“最後の砦”となります。ただ、いつまで頑張れるのでしょうか。

 その点が気になった筆者は、マイカーの車検に当たる重要検査「全般検査」を通すのかどうかをJR貨物幹部に直撃したところ「EF64形を含めた国鉄形ELはいずれも全般検査は通さない」と明らかにしました。

 その理由として「新しい機関車に比べると故障が多く、修理用の部品も調達しにくくなり、運転士養成を効率化するためにもJR貨物発足後の機関車に統一したいからだ」と説明しました。

 引退へのカウントダウンが始まった感のある国鉄形EL。ますます貴重な存在として、「その日」が来るまでは温かく見守っていきたいと思います。