「女性初」報道、在り方は=「背景や課題も触れるべき」―ジャーナリズム研究の林教授・国際女性デー

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 「初の女性首相」「女性初の会長」。政界や経済界などで女性のトップが初めて誕生するごとに、新聞などのマスメディアは「女性初」と報じてきた。ジェンダー平等を先導すべきメディアの報道の在り方や、女性初という表現への思いについて、ジャーナリズム研究を専門とする東京大教授の林香里同大理事・副学長に話を聞いた。
 「女性初」を前面に出すニュースは昔から多い。最近では、昨年の高市早苗首相の誕生時や2021年に芳野友子氏が連合会長に就任した際にもよく見られた。
 林教授は自身も日本メディア学会で初の女性会長を務める。男性が人望や業績で評価されるのに対し、女性はどれだけ高い地位に就いても「女性ならではの視点を」などと言われることがあり、「嫌になっちゃうことはしばしばある」と率直な胸の内を明かす。
 一方で、林教授は「女性初」と言われる立場にいることはむしろ、「ありがたいこと」とも強調する。祖母らの世代から今に至るまで女性は機会を逃し続けてきたとの思いがあり、「女性であることは関係ないと言えるほど、日本社会は男女平等を達成できていない」と考えるからだ。
 その上で、女性初がニュースだと報じるなら、女性がその職場で働きにくかった背景や、活躍が進まなかったことで残る課題などに触れるべきだと指摘。「『1人目』と書きっ放しにするのは無責任だ」と批判する。
 林教授は例として、高市首相誕生時の各社の報道を挙げ、長年の懸案となっている選択的夫婦別姓制度の是非といったジェンダー関連の問題を掘り下げる記事が少なかったと分析。首相側が経済・安全保障政策を主な争点として提示し、それを追い掛けるだけなら「議題を設定する力がないということでメディアの敗北だ」と断じる。
 海外では、要職に就く女性が増えたため、性別よりも個人の政治信条が注目されることが多く、女性であることが必ずしもニュースではなくなっているという。林教授は「日本でも、活躍する女性が増えれば報道は徐々に減るだろう」と予想。人数の増加は「女性にもいろいろな考えの人がいると分かってもらうために重要だ」と話す。
 林教授は学問を例に「多様な知見がなければ新しい知見に到達できない」とも主張し、社会が先細らないためには、性別も人種も多様な人材が必要だと訴えた。
 【編集後記】「『女性初』報道にもやもやとした気持ちを抱いてきた」と話す私に、林さんは「望む仕事に就けなかった人の思いを背負っているから、女性初はありがたいとも認めたい」「もらった恩を次世代の人に渡すのが私の仕事」と語った。言葉の重みを感じ、自分の想像力のなさを恥ずかしく思った。
 言われてみれば、確かに「『1人目』と書きっ放し」の記事は多い。本来考慮されるべき課題が埋もれないよう、安易な前例踏襲から脱したい。(時事通信社会部記者・清水桂那)。 
〔写真説明〕東京大教授の林香里同大理事・副学長(本人提供)
〔写真説明〕国際女性デー2026