2026年3月5日、海上保安庁初となる「国際業務」を主要任務とした6000トン級の大型巡視船「ふじ」が山口県で進水しました。全長134mを誇るこの巨大な船は、なぜ国内警備ではなく海外派遣をメインに建造されたのでしょうか。
海保初!「国際業務メイン」の巨大巡視船が誕生
三菱造船江浦工場(山口県下関市)で2026年3月5日、新たな巡視船「ふじ」が進水しました。
「ふじ」は、海上保安庁初となる国際業務を主要な業務とする巡視船で、日本周辺の安全保障環境が厳しさを増すなか、外国海上保安機関とのさらなる連携強化や海上保安官の育成などを図っていくため、2022年度補正予算で建造が決まりました。船価は約186億円で、2026年度中の就役を予定しています。
船名の由来は、日本の最高峰である「富士山」です。これは、海外への派遣や日本に寄港した外国巡視船との合同訓練といった業務に投入されることから、世界的な知名度を持ち、かつ日本一の高さをほこる山である点を鑑みて選ばれたとのことでした。
海上保安大学校や海上保安学校の学生などの乗船実習に加え、現場の海上保安官の研修などでの使用も想定。船上に多くの実習生を収容できるキャパシティを持つ「ふじ」を活用し、外国海上保安機関などとの連携・協力や、海保が行う東南アジアなど諸外国への海上保安能力向上支援の推進も図っていきます。
「ふじ」は、ヘリコプター1機搭載型の巡視船(PLH)です。命名書の読み上げと支綱切断は第七管区海上保安本部の福本拓也本部長が行いました。
船体サイズは全長134m、幅15.8mで、6000総トン、速力は25ノット(約46.3km/h)以上を発揮可能です。前部に40mm機関砲1基と20mm機関砲1基を搭載するほか、遠隔放水銃や遠隔監視採証装置、停船命令などの表示装置などを備え、より実践に近い状況で実習・訓練を行うことができる環境を整えます。また、教育を受ける学生や実習生、外国海上保安機関の職員などが乗船する練習船として、船尾側には研修区画を設けています。
なぜ「専用の船」が必要に? 緊迫する日本の海事情
「ふじ」が建造される背景には「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けた取り組みがあげられます。
海上保安庁は2000年から東南アジア周辺海域に巡視船を派遣しており、各国の海上保安機関との連携・協力関係の強化や、能力向上(キャパシティービルティング)支援による海上治安の改善に力を入れています。その回数は2025年1月の巡視船「せっつ」(3100総トン)の派遣で50回目となりました。
同年6月から7月にかけては、巡視船「みずほ」(6000総トン)が派遣され、外国海上保安機関に対する能力向上支援の専従部門「MCT(モバイルコーポレーションチーム)」によるマレーシア海上法令執行庁(MMEA)職員への海上犯罪の取り締まりを中心とした海上保安能力向上のための訓練を実施しています。
一方で緊迫感が増す尖閣諸島周辺海域での領海警備や大規模災害への対処など、国内において巡視船が担う役割が大きく増えています。このため従来は警備・救難業務の合間を縫う形で巡視船を海外へ派遣してきましたが、新たに国際業務を主要業務とする船が必要とされたのです。
「ふじ」の竣工は2027年度の予定で、就役後はさまざまな国との連携・協力を一層深めていく、日本の顔として活躍することが期待されています。