「高速の深夜割引」は何のため? “走った分だけ割引”への見直しは“誰得?”のワケ 「全部ヤメにすれば」と専門家

欧米で高い比率 PB商品とは?

導入から20年以上が経過した高速道路の深夜割引制度。深夜の高速道路を物流に有効活用しようと始まった制度でしたが、結果的に「0時待ちトラック」などで渋滞が発生する事態に。これを良い形で解決する施策はあるのでしょうか。

現状の「高速道路の深夜割引」はやや乱暴な仕組みと専門家

 午前0〜4時までの利用を3割引とする高速道路の深夜割引制度。これが初めて導入された2004(平成16)年から、早くも20年以上が経過しています。当初は、環境への配慮や交通量の少ない深夜のインフラを有効活用させるために始まった制度ですが、いわゆる「0時待ちトラック」が続出し、料金所付近が渋滞したり、物流ドライバーの長距離連続走行などが問題視されたりするようになりました。

 こういった問題を解消させるために、2026年以降、制度の変更も計画されているようですが、この一連のことを専門家はどう見ているのでしょうか。

 元大型トラックドライバーの交通心理士で、近畿大学・生物理工学部の島崎 敢准教授は、現状の「高速道路の深夜割引」はやや乱暴な仕組みだったと指摘します。

「インフラの有効活用や道路周辺の環境改善という視点(立場1)からは『トラックはなるべく交通量の少ない深夜に高速道路を走ってほしい』わけです。

 一方、労働環境とか交通安全の視点(立場2)からは、夜中にドライバーを働かせるのは好ましくないので、できれば昼間に走りたいわけです。

 この2つの勢力がせめぎあう中、深夜割引は立場1の文脈で作られた制度でした。しかし、0~4時の間に1分でも高速道路内にいれば割り引かれる(極端な話、この時間に全く走行していなくても)というやや乱暴な仕組みだったので、この時間を狙ってインターを出入りしようというトラックで溢れ返るようになりました。

 これが問題視されるようになり、今後改正される料金計算は、『深夜の時間帯に走っていたかどうか(SA、PAなどに停まっていた分はカウントされない)』となり、割引の深夜の時間帯を狙って、高速に乗る・降りるという行為をしても、あまり得しなくなります。

 この制度変更で、割引狙いのトラックの待機などは減ると期待されていますが、この一方で『長距離割引』的なこともやろうとしているとも言われています。これが制度化されると、トラックドライバーの連続運転の助長につながるのではないかという、新たな批判も出てきています」(島崎准教授)

交通容量と安全の問題の両方を最大化した「一番得する改善策」

 なかなか難しい「高速道路の割引」制度ですが、島崎准教授には個人的な改善アイデアがあるといいます。

「高速道路の『時間帯割引』とかは全部ヤメにし『制限速度で走行+法令で定められた休憩を取った時間』ピッタリの走行時間(ICのイン・アウト)のクルマを最大の割引率にします。

 それより速いクルマ(スピード違反をするなどと合わせて休憩していないクルマ)や、それより遅いクルマ(長時間待機や渋滞によって遅いクルマ。ただし事故渋滞などを除く)の割引率を段階的に下げていけば、全部解決するんじゃないかと思っています」(島崎准教授)

 つまり、個々のドライバーに法令で決められた運転を促し、守れたドライバーに割引を適用する、というもの。皆が守れば確かに円滑に進み、交通安全の視点から見ても絶大な効果がありそうです。

「前述の<立場1>から考えれば、本来の目的は『深夜に走ってもらうこと』が最初にあったわけではなく、『交通量を分散させて渋滞しないようにする』ことだったはずです。仮にこの方法を実施した場合、渋滞にハマった場合は割引の対象外になりますから、どんなドライバーも、自ずと空いている時間を狙うようになるだろうし、そもそもあまり混雑しないような地方部の高速道路なら、日中でも割引を適用することができます。

 また、高速道路上のPA・SAで長時間待機する人には割引が適用されなくなるわけですから、間接的に待機料金を負担してもらうカタチにもなります。そうすれば、『SA・PAが混雑していて入れない』といった問題も解消するかもしれません。

 交通容量の問題と、安全の問題双方を最大化すれば、一番得するカタチだし、シンプルでわかりやすいと思います。この場合、机上の計算では厳密にはNEXCOの収入が下がるものなのですが、それでも安全かつ物流の安定を計る上では、良い策ではないでしょうか」(島崎准教授)