自動車の給油は「リットル」ですが、航空機は「キログラム」や「ポンド」が主役。なぜ違うのか、知られざる「航空燃料の取り決め」を解説します。
なぜ航空機は燃料を「重さ」で数えるのか?
私たちが車を給油する際、その量は「リットル(体積)」で計ります。ところが航空機の世界では、体積のほかに「重量(質量)」も併用して計量されます。なぜ、わざわざ2種類の計量方法を使い分けているのでしょうか。
実務において、航空機用燃料の計量で主に使われるのは、「重量」です。これには明確な理由があります。搭載燃料を含めた機体の総重量(ポンドもしくはkg)は、離陸時の滑走距離や離陸決心速度(V1)、機首引き上げ速度(VR)、安全離陸速度(V2)といった安全飛行に直結する数値を算出するための基礎データとなるからです。機体が重くなれば、離陸に必要な速度は上がり、かつ必要な滑走距離も長くなります。
また、運用上の制約として「最大離陸重量(MTOW)」や「最大着陸重量(MLW)」の把握も欠かせません。タイヤや脚といった降着装置の強度の関係で、最大着陸重量は最大離陸重量よりも低く設定されています。そのため、離陸直後にトラブルが発生し緊急着陸を迫られた場合、総重量が最大着陸重量を下回るまで旋回して燃料を消費するか、燃料を機外へ放出する「燃料投棄(フューエル・ダンプ)」を行って、機体を軽くしなければなりません。
さらに、飛行中の重心バランスの調整や、戦闘機における最大制限G(重力加速度)の管理、さらには燃料の炭化水素(HC)成分に基づく発生熱量の計算においても、温度によって変化してしまう「体積」より不変の「重量」で把握する方が、圧倒的に都合が良いのです。
給油時や設計時は「体積」が主役? 場面で変わる計量のルール
一方で、すべてを重量で解決できるわけではなく、「体積」が使われる場面もあります。
まず機体の設計段階です。燃料タンクのキャパシティ(容量)は、物理的なスペースの問題であるため、体積で計算せざるを得ません。また、給油作業そのものも流量計を用いて、「リットル」や「ガロン」で行われます。ここで面白いのが、燃料の密度は気温によって変化する点です。気温が低ければ密度が高まり、同じ体積でも「重く(エネルギー量が多く)」なり、暑ければ軽くなります。
このほか、燃焼時の空気と燃料の比率(空燃比)の制御や、エンジンへの燃料流量の計算など、システムの作動面では体積ベースの計算が用いられています。
パイロットや運航管理者は、燃料を「機体の重さ」として、あるいは「エネルギーの源」として、場面に応じて2種類の単位を使い分けながら安全を支えています。クルマでもモータースポーツの世界では燃料がシビアに扱われますが、三次元の空を飛ぶ航空機にとって、この使い分けはまさに「命に関わる」重要なプロセスといえるでしょう。