【ワシントン時事】少女らの性的人身売買の罪で起訴され勾留中に死亡した米富豪ジェフリー・エプスタイン氏に関する捜査資料約300万枚が新たに開示され、波紋を広げている。エプスタイン氏とロシアの関係の深さが浮き彫りになり、ポーランド政府が調査に着手。英国では同氏と与党重鎮議員の親密な交流が政治問題に発展した。
米司法省が1月末に公開した「エプスタイン文書」と呼ばれる資料の分析で浮上したのが、英労働党のマンデルソン上院議員が経済政策に関する機密情報をエプスタイン氏と共有していた疑惑だ。マンデルソン氏は今月に入り議員辞職を強いられ、与党を揺るがす事態になっている。
資料には、トランプ大統領、クリントン元大統領、実業家イーロン・マスク氏ら大物の名前が多数登場。既にエプスタイン氏との交流を認めている日本人研究者とのやりとりも含まれていた。米欧政財界の要人男性の非公式な社交ネットワークが、エプスタイン氏を媒介に形成されていた実態が垣間見える。
この人脈の中で注目を集めているのが、ロシアとの接点だ。報道によれば、エプスタイン氏は2010年代、ノルウェー・ノーベル賞委員会のヤーグラン委員長(当時)らを通じロシアのプーチン大統領との会談を模索したり、複数のロシア政府高官と交遊を深めたりしていた。
エプスタイン氏が有力者にロシア人女性を紹介していたことを示唆する文書もある。ポーランドのトゥスク首相は今月3日、「小児性愛スキャンダルはロシアの情報機関との共謀ではないかという疑惑に結び付く」と明言。ロシアが「ハニートラップ」(女性を使って弱みを握る工作活動)を仕掛けていた可能性も指摘されている。
一方、肝心の米国での報道は抑制気味だ。「ヨット上で赤ちゃんを解体していた」などとする信ぴょう性が低い「目撃証言」が多い上、開示情報の大半は以前から伝えられていた内容のためだ。トランプ氏は、「この国はそろそろ別のことに取り組む時だ」と述べ幕引きを図る。
ただ、与党共和党がクリントン氏に証言するよう求めるなど、政治利用の動きは収まっていない。クリントン氏は27日に下院で証言に臨む予定で、野党民主党も11月の中間選挙に勝利すれば、トランプ氏に同じ要求を突き付けることになるとけん制を強めている。
◇「エプスタイン文書」中の主な要人
米映画監督ウディ・アレン氏▽英国王の弟アンドルー氏▽クリントン元米大統領▽ビル・ゲイツ氏▽サマーズ元米財務長官▽チュルキン前ロシア国連大使▽トランプ米大統領▽バノン元米大統領府首席戦略官▽バラク元イスラエル首相▽ベリャコフ元ロシア経済発展副大臣▽イーロン・マスク氏▽マンデルソン元英上院議員▽ヤーグラン元ノルウェー・ノーベル賞委員会委員長▽ライチャーク元スロバキア外相▽米映画監督ブレット・ラトナー氏▽ラトニック米商務長官=姓の五十音順。
〔写真説明〕米富豪ジェフリー・エプスタイン氏=撮影日不明、米当局提供(EPA時事)