「若者のクルマ離れ」は誤解だった? 都市は“持たない選択”、地方は“必須インフラ” 普及台数4倍差の現実

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“若者のクルマ離れ”と言われて久しいですが、統計データを見ると地域ごとに大きな差があるようです。都会と地方で分かれる”持たない理由”と”持つ理由”の正体とは、一体どのようなものなのでしょうか。

都市部でクルマを持たないのは”合理的”な判断

 近年、「若者のクルマ離れ」という言葉を、そこかしこで聞くようになりましたが、本当にそうなのでしょうか。

 免許の取得状況を見てみると、ソニー損害保険の調査では、20歳の運転免許保有率が2023年が61.2%、2024年で56.2%、2025年は53.5%と年を経るごとに低下しています。2021年から2023年にかけては、20歳の運転免許保有率は上昇傾向にあったとのことで、2024年以降、下降に転じている模様です。

 ただ、この免許保有率のみを切り取って、若者がクルマに無関心になったと決めつけるのではなく、免許取得のタイミングや生活環境の変化も含めて判断する必要があります。

 そもそも、公共交通が発達した都市部では、クルマを所有しないという判断が非常に合理的なのは間違いないでしょう。

 その要因の1つに挙げられるのが、住居費と並ぶ大きな固定費となる駐車場代です。駐車場の相場には大きな地域差があり、人口密集地である都心部などでは維持費の負担が重くなりがちです。

 この経済的なインパクトが、クルマを「持つ・持たない」という判断に直結していると考えられます。

 こうした維持費の負担を避けるため、都会の若者はカーシェアなどを賢く活用する傾向にあります。

 利用者の属性を見ても若年層の割合が高く、サービスを活用して必要なときだけクルマを使うスタイルが広がっています。

 都市部においては、所有するメリットよりも、コストを抑えて利便性を享受する最適化が進んでいるといえるのではないでしょうか。

地方では生活の足として欠かせない場面が多い実態

 一方、地方に目を向けるとまったく異なる景色が見えてきます。

 2025年3月末時点のデータで、1世帯あたりの自家用車普及台数ではトップの福井県が1.670台なのに対し、東京都は0.405台となっています。

 地方と東京では普及台数に約4倍もの開きがあり、クルマがいかに生活の足として欠かせないか、わかります。

 生活していくうえで自動車が必須のため、地方在住の若者の所有意向も、依然として高い水準にあるようです。

 調査によると、地方在住の若年層の多くが自分名義のクルマを欲しいと考えており、将来的な所有に対しても意欲的な姿勢を見せています。

 地方圏では就職と同時にまず移動手段を確保する必要があるため、実用的な軽自動車や中古車が、若者たちの実用志向の受け皿として選ばれています。

 これらを鑑みると、この現象は単純な「クルマへの関心低下」などではなく、住んでいる場所の利便性とコストを考えた結果だといえるでしょう。

 実際、都市部在住の若者であっても、実家暮らしや高所得など、駐車場が用意できる環境にある場合は、意外と免許を持っており、欲しいクルマを購入しています。前出のソニー損害保険の調査では、合わせて「車の購入意向について」も調査していますが、それによると、「自分の車を持っている」は15.8%、「自分の車を購入する予定がある」は12.5%、「購入する予定はないが、いずれは欲しい」は49.3%で、合計した「車の所有に肯定的」な割合は77.5%で、4人中3人がクルマ所有に前向きだといえます。

 都会であっても維持費が生活を圧迫している状況ではカーシェアやレンタカーを選び、生活に不可欠な地方では所有を選ぶ。若者たちは自分たちの生活環境に合わせて、クルマとの付き合い方を冷静に選択しているのです。