日本初の原子力船→世界最大級の海洋観測船に劇的チェンジ!「唯一無二の激レア船」関係者が語った「みらい」への思い

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2025年12月、世界最大級の海洋研究船「みらい」が28年の現役生活を終えました。その正体は、1970年に誕生した日本初の原子力船「むつ」。船体を切断・改造してまで「研究船」として再生した波乱万丈な歴史を振り返ります。

無寄港で2か月間の調査航海が可能

 JAMSTEC(海洋研究開発機構)が運用していた海洋地球研究船「みらい」の退役記念イベントが2026年1月、横須賀港の新港埠頭(神奈川県横須賀市)などで開催されました。25日に行われた最後の一般公開では、早朝から多くの船舶ファンや家族連れが並び、約3300人が船内を見学しました。

「みらい」は世界最大級の海洋観測船として1997年10月の就航から2025年12月まで、約28年間にわたって北極海での観測・研究に従事してきました。同船の全長は128.58mで、幅は19m、深さは10.5m、総トン数は8706トンです。定員は80人(乗組員34人、研究者46人)、メインエンジンとしてディーゼル機関を4基搭載しています。航続距離は1万2000海里(約2万6000km)を誇り、無寄港で最大60日間の観測航海を行うことが可能です。

 通常の操船を行う前方のブリッジに加えて、観測甲板全体を見通せる後部操舵室が設けられており、ここでクレーンやウインチ、CTDシステムなどの遠隔操作と監視が行えます。加えて、観測時に船首方位や定点を保持するため、ジョイスティックでのコントロールが可能なシステムを採用しています。もちろん設定した船首方位を自動的に維持する方位保持機能も備わっています。

「みらい」は海水の成分や流れを調べるための大型CTD採水システム、海底地形や構造を調べるマルチナロービーム測深装置、重力計、磁力計などを搭載。デッキ上には大気や気象、雲を調べるためのドップラーレーダーシステム、ラジオゾンデの放球コンテナなどが設置されています。さらに熱帯域の気候変動研究で使用する大型の海洋観測ブイ(トライトンブイ)を輸送するための格納庫なども備えています。

 これは「みらい」の観測対象が海洋、大気、生物、海底と多岐にわたるためで、こうした大型の機器の投入や揚収のために、Aフレームクレーンをはじめとした、大小さまざまなクレーンが船上に設けられました。船内には採取した試料やデータをすぐに分析・解析できるよう、それぞれの目的に合わせた研究室や実験室があり、必要な研究機器も船内に装備されています。

 こうした特徴を持つ同船は、北極域だけでなく、赤道域なども含め250回以上の航海を行い、海洋域の観測研究に大きな貢献を果たしました。総航走距離は約230万km。乗船者数は延べ8100人を超えます。

原子炉を撤去し、船体を二つに切り離して挑んだ「再生手術」

 JAMSTECで北極研究に携わっている藤原周さんは「『みらい』の総乗船日数は2年近く。大人になってからは実家に帰っている日数よりも長く『みらい』に乗り込んでいます。だからか、船内に入ってディーゼルの匂いを嗅ぐだけで嬉しくなってしまう」と話していました。

 とはいえ、「みらい」は最初から海洋地球研究船として建造されたわけではありません。そもそも同船は日本原子力船開発事業団が保有する日本初の原子力船「むつ」として誕生しています。

 建造は半世紀以上前で、石川島播磨重工業(IHI)の東京第2工場(現アーバンドックららぽーと豊洲)で起工、1970年に船体が完成したものの、運用開始直後に放射線漏れが発生。世論の大きな反発による計画の遅れや、政府の財政難による事業の見直しなどがあり、1992年に原子力船としての実験航海が終了することになりました。

「むつ」の改造に当たっては、まず原子炉区画の前後で船体を切断。原子炉区画が撤去された船体は台船に載せられて関根浜港(青森県)から東京湾へと運ばれました。船体前部は、生誕の地であるIHI東京第1工場(第2工場から改称)で改造され、船首外板の耐氷構造化やバウスラスター、ソナードームの設置などが行われています。

 一方、船体後部は三菱重工業の下関造船所で、ディーゼルエンジンの搭載や2軸の可変ピッチプロペラへの換装などが行われましたが、こちらは改造というより、ほぼ新造に近い工事となっています。

 前部と後部の船体が接合され、1996年8月にIHI東京第1工場で2度目の進水式を迎えた「みらい」は、再び三菱重工下関造船所へ向かい観測装置や旧ドップラーレーダーを搭載。そして1997年9月に竣工しました。

 JAMSTECの山室悠太さんは「完全に一から建造したらこれだけの規模の研究船にはならなかった。『むつ』から改造したからこそ荒天に強い大きな船になったのではないか」と話していました。

 2026年2月現在、JMU(ジャパンマリンユナイテッド)横浜事業所磯子工場では後継に当たる砕氷型の北極域研究船「みらいII」(1万3000総トン)の建造が進められています。同船の竣工予定は2026年11月。「みらい」から「みらいII」へのバトンタッチと共に、日本の海洋研究は新しい時代を迎えます。