2026年に願う冨安健洋の“完全復活”「これからは自分次第。この決断をして良かったと思えるように」

「3月のイングランド戦での代表復帰はもちろん目指しています。ウェンブリーでイングランドと対戦できたら面白いですよね。(2025年7月に退団した)アーセナルのファンにも結局挨拶できていない。自分の元気な姿を彼らに見せられれば、本当に最高のシナリオかなと思います」

 12月21日、成田空港に集まった大勢の報道陣を前にこう力を込めたのが、冨安健洋である。ご存じの通り、2024年10月のサウサンプトン戦で右ひざ負傷を再発し、1年以上も表舞台から遠ざかっていた。所属していたアーセナルを双方合意で退団した夏以降は無所属状態で回復に努めていたが、思うように復帰の目処が立たず、本人も焦燥感が募ったに違いない。

「このままだとワールドカップ出場も難しいだろう」という悲観論も高まりつつあった12月、オランダの名門・アヤックスと半年間の短期契約を締結したことが明らかになった。「アヤックスは熱量が高かったというか、僕のことを信頼してくれていると感じたので決めました。決める前にもちろん(板倉)滉くんとは連絡を取っていましたし、チームの状況や戦術について話をしました。いい準備になったかなと思います」と新天地決定の背景を説明した。世代別代表時代からの盟友・板倉とともに北中米W杯を目指せる環境は理想的ではないか。

 日本代表に関して言うと、昨年末に南野拓実という攻撃の絶対的主軸が左ひざの重傷を負い、本大会参戦が絶望的になった。これには森保一監督も胸を痛めているに違いない。だからこそ、圧倒的なリーダーシップを備えた冨安が戦線に戻ってくるのは朗報だ。2024年のアジアカップ準々決勝でイラン代表に苦杯を喫した際も、冨安は「熱量が足りない」と語気を強め、チーム全体の自覚を促していた。そういった歯に衣着せぬ発言のできる中堅世代の人材がいるかいないかは、日本の成否を大きく左右する。

 高度な国際経験値という点でも、冨安がいるメリットは非常に大きい。オランダ代表、チュニジア代表、欧州プレーオフ勝者(ウクライナ代表・ポーランド代表・スウェーデン代表・アルバニア代表)と同組に入ったことを問われた際にも「前回大会もそうでしたけど、個人的には欧州の国とやる方がやりやすいし、読める部分がある」と余裕ある発言をしていたが、戦術の幅やメンタル面を含めても、冨安は万全の状態でチームにいてもらわなければ困る。ここから着実にコンディションを引き上げ、トップフォームを取り戻した状態で本番を迎えてもらうしかないのだ。

「1月からプレーできればいいなと思っています。部分合流からにはなりますけど、全てが整えば1月から全体練習に入れる段階には来ています」と本人は静かに言う。となれば、ベンチ入りは1月17日のゴーアヘッド戦、もしくは24日のフォレンダム戦あたりか。そこで少しでもピッチに立てれば、2月以降はスタメン復帰も見えてくる。今季序盤から苦戦を強いられたアヤックスにとっても、アーセナルでプレーしていた男が戦力になってくれれば、ここからの巻き返しも可能だろう。冨安はクラブからも代表からも強く求められている人材なのである。

 ただ、前回公式戦のピッチに立ったのは約14カ月前。代表戦になると2024年6月の2次予選・シリア代表戦(広島)から約18カ月も経過している。当時とはDF陣の状況も変化した。冨安や伊藤洋輝、町田浩樹らがケガで長期離脱を強いられている間に、同じオランダ1部でプレーする渡辺剛、デンマークでUEFAチャンピオンズリーグに参戦中の鈴木淳之介らが台頭。長くチームを離れていた“かつての主力”が出番を保証されているという状況ではなくなったのだ。

「若い選手に出てきてほしいというのは前々から言っていましたし、チームとしていい循環が生まれると思っています。僕の場合は自分にフォーカスしないといけない。まず復帰しないといけないし、アヤックスで試合に出ないといけない。まずはそこからだと思います」と強調。2018年10月のパナマ代表戦(新潟)で初キャップを踏んだ19歳の頃を思い出して、ゼロから代表キャリアを積み上げていく覚悟だ。

「ケガでアーセナル退団を選ぶというのは、世界的に見てもなかなかない決断。それが僕にとってベストだったと思っている。これからは自分次第。振り返った時に、この決断をして良かったと思えるような準備はできています」とも語気を強めたが、本当にそうするためにも必ず半年後のW杯に赴き、フル稼働することが重要だ。別メニューが続き、不完全燃焼に終わったカタールW杯の苦い思いを糧に、冨安には2026年“完全復活”を遂げてほしいものである。

取材・文=元川悦子

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