コメ農家の青年「アキタ・ケン」がナマハゲの力を借りて変身し、悪の組織と戦う―。2005年に秋田県で生まれ、ご当地ヒーローの草分けとされる「超神ネイガー」。X(旧ツイッター)のフォロワー数は10万人超で高い人気を誇る。地元に根付くヒーローの活動を支えるのは佐藤智隆さん(46)と、弟の史崇さん(43)だ。
ネイガーは同県男鹿市のナマハゲが大みそかの夜、「泣く子はいねがー」と叫んで家々を回ることから命名。悪の組織は「だじゃく組合」で、「ずるい、怠けている」を意味する方言から取った。
2人がネイガーを演じたのは、当時通っていたスポーツジムのオーナーからヒーローショーへの参加を誘われたのがきっかけだ。2人ともネイガーには詳しくなかったが、当時格闘家として活動してアクションには自信があったため、興味本位で飛び込んだ。
デビュー後すぐに人気が出て、「韓流スターかと思うぐらい忙しくなった」(智隆さん)。活動開始から2年後の07年にはヒーロー活動が専門の会社を設立。ショーに出る仕事が本格化した。
イベントやショーでは、必殺技や武器にきりたんぽといった秋田の特産品を盛り込む。格闘家の経験を生かし、プロレス技を使うなどアクションにもこだわっている。
イベントを中心に各地を精力的に回る智隆さんら。そんな2人の活動が変わったのは11年3月の東日本大震災だった。
秋田に隣接する宮城県の女川町の関係者は震災前、ご当地ヒーローを新たに立ち上げるため智隆さんらを訪れていた。その縁から2人は震災1年後に同町であった復興イベントに参加。津波で甚大な被害を受けた町を目の当たりにし、智隆さんは「『自分たちの活動を通じて何かできないか』という思いが強くなった」と明かす。
現在は「より身近なヒーローに」をモットーに地域の防犯活動に参加し、地元でコメ作りに取り組む。史崇さんは「町に溶け込んでいる姿が長く支持してもらえている要因では」と誇らしげだ。
活動から20年。3世代で応援するファンもいる超神ネイガー。2人は「期待に応えるため活動をしっかり続けて、いいものを見せていきたい」と意気込んでいる。
〔写真説明〕訪れたこども園で、園児らに手を振る秋田県のご当地ヒーロー「超神ネイガー」=11月19日、同県羽後町
〔写真説明〕秋田県のご当地ヒーロー「超神ネイガー」をスーツアクターとして支えている佐藤智隆さん(右)と弟の史崇さん=10月28日、同県にかほ市