2025年に10年ぶりに超音速戦闘機ゼロ状態が改善。ただし、海軍の潜水艦保有という問題がまだ解決していない。
潜水艦の問題はまだ続いている
2025年12月7日、アルゼンチン本土において、デンマーク空軍から購入したF-16「ファイティング・ファルコン」が初飛行しました。これは、2015年にダッソー「ミラージュIII」を退役させて以来、約10年ぶりとなる超音速機の飛行です。
アルゼンチンは、経済的困窮や1982年のフォークランド紛争を発端としたイギリスの制裁などにより、長期間にわたって超音速機を配備できない状況が続いていましたが、2025年にようやくその問題が解消されました。しかし、アルゼンチン軍に課題がなくなったわけではありません。その代表例が、海軍の潜水艦問題です。
同国海軍の潜水艦は、フォークランド紛争後間もない1984年に就役したサンタクルス級が最新型ですが、同級の「サン・フアン」が2017年に事故で沈没して以降、外洋航行が可能な潜水艦はゼロの状態が続いています。
現在もアルゼンチン海軍では、「サン・フアン」と同型艦の「サンタ・クルス」、およびそれより古いサルタ級潜水艦「サルタ」が艦籍上は退役していません。しかし、いずれも老朽化が著しく、実際には稼働しておらず、事実上の退役状態にあるといえます。
そのため、友好関係にあるペルー海軍から潜水艦を借りて訓練を行うこともあり、直近では2025年11月に、海軍潜水艦学校の学生がペルー海軍の潜水艦を使用して訓練を実施しています。
フォークランド紛争当時、アルゼンチン海軍は、空母「ベインティシンコ・デ・マヨ」とシュペル・エタンダールを中心とした艦載航空部隊を擁する海軍航空隊、さらに旗艦であった軽巡洋艦「ヘネラル・ベルグラノ」をはじめ、駆逐艦、潜水艦、揚陸艦など多数の艦艇を保有する、南米有数の海軍力を誇っていました。
しかし、この時点ですでに経済問題は顕在化しており、紛争終結後は状況がさらに深刻化します。その後も経済政策の失敗などが重なり、国防費は大幅に削減されました。空母の退役にとどまらず、2010年代に入ると潜水艦の運用すら困難な状態に陥ります。
新型潜水艦の購入が決定! しかし!?
ただし、こうした状況に変化の兆しも見られます。2024年末には、アルゼンチン国防省がフランスのスコルペヌ級潜水艦を購入するため、建造元であるナバル・グループと意向書に署名したと報じられました。さらに2025年11月には、ハビエル・ミレイ大統領がスコルペヌ級潜水艦3隻の調達を進めることを正式に発表しています。
スコルペヌ型潜水艦は、魚雷を主兵装とし、水上艦艇や潜水艦への攻撃を任務とする攻撃型潜水艦です。南米では、ブラジル海軍がリアチュエロ級、チリ海軍がスコルペヌ級としてすでに運用しており、高い信頼性を持つ潜水艦として評価されています。
もっとも、中古ではなく新造のスコルペヌ級3隻を導入する場合、必要となる資金は莫大です。アルゼンチン国内の報道によれば、同国の国防予算だけでは一括払いは困難とされています。経済状況は一時期に比べれば改善傾向にあるものの、公共支出に対しては依然として慎重な姿勢が強いためです。
そのため、アルゼンチン政府はフランスからの資金支援を受け、分割払いによる調達を模索していると報じられています。これが実現すれば、艦隊強化における予算制約という大きな障害を軽減できる可能性があります。
とはいえ、導入までには依然として多くの課題が残されており、アルゼンチン海軍が外洋航行可能な潜水艦戦力を回復するのは、最短でも4年以上先になると見られています。