JR東海の313系電車は、同社のウェブサイトでも「様々なバリエーションを持つ」と説明されるほど、多種多様な設備を持つ形式です。その魅力を紹介します。
20年にわたり製造
JR東海が1987(昭和62)年に発足した当時、同社の在来線普通列車は国鉄形の103系や113系、115系、165系などが主力車両でした。1990年代にこれらが置き換え対象とされ、近郊形電車の新規製造に迫られました。そして誕生したのが313系電車です。
313系は様々なタイプの車両を置き換えるために製造されたため、それだけに細かい差分があります。製造期間は20年(2019年の代替新造を含む)におよび、15区分に分かれています。共通しているのは、「片側3扉で貫通型の前頭部を備えている」という部分だけです。
最初に登場したのは、転換式クロスシートの0・300・1000・1500番台です(編成両数などで区分)。このうち1000・1500番台(2006年の1100・1600・1700番台含む)は「車端部がロングシート」の異なる仕様です。
転換式クロスシートは座席間隔が875mmで、311系の910mmより狭いものの、座面の奥行きを狭くして、足元のスペースを確保しています。側窓側にも肘掛けを備えている点はJR東海らしい座席といえます。座席形状が良く足元も広いので、不足のない座席だと思いますが、単純な座り心地は先代の311系の方がやや上だと思います。
座席間隔を詰めたことで、側扉付近の乗降スペースが広くなっています。なお、側扉に近い座席は固定式クロスシートです。
1999(平成11)年に有料列車用として登場した8000番台は、座席間隔が910mmと広く、背もたれもより高くなってプライベート感が増しています。車端部はボックスシートで、大型テーブルが備わる「セミコンパートメント」です。
8000番台は有料快速「セントラルライナー」での運用時に、本系列で唯一130km/hの最高速度で運転を行っていました。現在は静岡地区に集められ、他の313系と区別されずに運用されています。
近郊形電車の転換式クロスシート車としては現在でも最高グレードの車両であるため、とても人気です。背もたれが高くなったことで着座時のプライベート感が増し、特急形に近い落ち着きを感じます。なお、8000番台は外部塗装が異なるため容易に識別可能です。
2006(平成18)年に登場した5000番台は、扉に近い座席も転換式クロスシートに改められ、全ての座席が進行方向に向くようになっており、窓側の肘掛けと合わせて、非常に高いグレードといえます。
クロスシート車の行く末は?
1998(平成10)年から2000(平成12)年にかけて製造された第1・2次車には、扉間がボックスシートのセミクロスシートタイプもあります。これが3000番台(2006年の増備車は3100番台)です。
転換式クロスシートは東海道本線の新快速・特別快速に、ボックスシートは支線のローカル運用向けでした。ボックスシートは背もたれの傾斜が乏しいものの座席形状自体は好みで、同じボックスシートを備えたJR東日本のE233系と比較してもクッション性で上回ります。
2006(平成18)年の第3次車は、2300・2350・2500・2600番台(ブレーキや編成両数、ワンマン対応などで区分)としてロングシート仕様が登場しました。これは輸送力確保を目的としたものです。それでもトイレが設けられているのは、特筆すべき点といえます。ロングシートは、座面が広いことで比較的ゆったりと座れることが特徴です。なお、313系全般に言えますが、窓が大きく、窓柱が狭いため景色を眺めやすいのは賞賛すべきところです。
2010(平成22)年から2012(平成24)年にかけて第4次車が登場し、1300番台(転換式クロスシート+車端部ロングシート)と5300番台(オール転換式クロスシート)が加わっています。さらに、武豊線の電化に対応するために、2014(平成26)年に5次車を増備。2017(平成29)年の踏切事故に対応して、クハ313-5102とモハ313-5402(5000番台)の2両が同じ車番で代替新造されており、現時点ではJR東海で最新の転換式クロスシート車です。
転換式クロスシートを備えた先代の311系はすでに引退し、後継車の315系は「通勤形」に区分され、転換式クロスシート仕様車は存在しません。そのため、登場から26年が経つ313系初期型の新快速後継車がどうなるのかは、注目です。
313系はJR東海のすべての電化路線で運用された汎用性の高い車両です。現在も315系に置き換えられた中央本線名古屋~中津川駅以外で運用されています。今後もしばらくは活躍が続くと考えられますが、その多彩さに目を向けるのもおもしろいのではないでしょうか。