「反高市」存在感薄く=派閥解散、高支持率で沈黙―自民

 自民党内で高市早苗首相に批判的な議員の存在感が希薄だ。首相への直言をいとわないのは石破茂前首相くらいで、保守的な立場の首相と距離のある「リベラル派」などはそろって沈黙。派閥の解散がこうした勢力の結集を妨げ、高い内閣支持率を背景に「物言えない空気」が広がる。
 「国家のためにいい仕事をしてもらうためには、言うべきことを与党の中から言わないといけない」。石破氏は22日に公開されたユーチューブ番組で、引き続き物申していく姿勢を強調した。
 石破氏は台湾有事を巡る首相の発言に対し、「外交問題に発展する答弁をしてはいけない」と批判。1年後の45議席自動削減を盛り込んだ与党の衆院議員定数削減法案を「世界の民主主義の中でも類例のない話」と断じた。「おこめ券」配布も疑問視した。
 しかし、石破氏に続く動きは表立って見られない。リベラル勢力と位置付けられる旧岸田派を率いた岸田文雄元首相は首相の要請を受け、党の総裁直属機関「日本成長戦略本部」本部長に就任。首相を支える立場を明確にした。
 岸田氏は台湾有事答弁に関し、周囲に「中国による日本産水産物禁輸など影響が出ている」と不満を漏らすものの、公言は避けている。超党派の「日中友好議員連盟」会長を務める森山裕前幹事長もかねて首相と距離があるが、沈黙を保つ。
 党総務会は25日、積極財政路線を鮮明にした2026年度予算案を審査。異論は出ず、了承の運びとなった。「世の中の追い風を受ける首相を悪く言えば、自分が攻撃されるだけだ」。ある閣僚経験者は諦めを口にする。
 かつては派閥が議員を束ね、首相批判の震源地ともなってきた。だが、裏金事件を受けて麻生派以外は解散。世論の視線はなお厳しく、旧派閥単位の動きは少ない。党関係者は「議員同士の横のつながりが希薄になった」と指摘する。
 首相とその周辺の目も気になる。選挙基盤の弱い若手衆院議員は「『反高市』のレッテルを貼られたら、執行部の支援を得られなくなる不安がある」と打ち明ける。
 もっとも、この沈黙が続く保証はない。来年1月23日召集予定の通常国会では、首相や閣僚が連日のように野党の追及の矢面に立つ。特に予算委員会の質疑は政権に打撃を与えるケースが多く、首相周辺は「支持率が下落に転じたら、党内の雰囲気はがらっと変わる」と気を引き締めている。 
〔写真説明〕高市早苗首相(写真右)と石破茂前首相