【ニューデリー時事】建国以来対立が続くインドとパキスタンの首脳が最後に会談してから25日で10年がたった。当時、過去に3度の全面戦争を経験し、核兵器を持つ両国の間に雪解けムードが一時的に広がったが、会談直後に武力衝突が発生し、関係は冷却化。現在も改善の糸口はつかめていない。
2015年12月25日、モディ首相はインド首相として約12年ぶりにパキスタンを電撃訪問した。モディ氏はパキスタンのナワズ・シャリフ首相(当時)と短時間会談し、2国間の問題解決に向けた対話の再開で合意した。ナワズ・シャリフ氏は、前年のモディ氏の首相就任式に出席しており、関係改善への期待が高まった。
しかし、会談後は係争地カシミール地方の実効支配線付近で両国軍の小競り合いが続いた。19年には同地方のインド側で起きたテロの報復として、イスラム過激派が支配しているとされるパキスタン側の拠点をインドが空爆。パキスタンも応戦した。
さらに今年5月、同地方で起きた越境テロを受け、インドはパキスタン領内で軍事作戦を実施。4日間の交戦に発展した。これに先立ち、両国は互いに国境閉鎖や貿易停止といった措置を取ったほか、インドは自国からパキスタンに流れるインダス川の水資源配分を定めた協定の履行停止を宣言した。
衝突を経て、モディ氏はパキスタンとの交渉を拒否している。パキスタンのシャバズ・シャリフ首相は「カシミール問題は対話と外交を通じ解決するべきだ」と、モディ氏に呼び掛けた。
ただ、パキスタンの陸海空3軍を束ねる軍参謀長に今月昇進したムニール元帥は対インド強硬派と目されている。8月には訪問先の米国で「われわれがもし滅びるなら世界の半分を道連れにするだろう」と、核兵器使用を示唆する発言をしたと報じられた。
インド・ネール大のガデ・オムプラサド准教授(南アジア地域研究)は「ムニール氏が権力を固める過程にあるため、今のところいかなる種類の協議も行われる可能性はない」と分析。その上で、対話の再開に向けて「パキスタンが反インドのテロ組織への支援をやめるべきだ」と強調した。パキスタン側も、自国で起きたテロの背後にインドがいると主張しており、互いに歩み寄る気配はない。
〔写真説明〕握手するインドのモディ首相(右)とパキスタンのナワズ・シャリフ首相(当時)=2015年12月25日、パキスタン東部ラホール(AFP時事)