追加利上げで「優勝劣敗」鮮明に=小規模地銀、恩恵享受できず

 日銀が政策金利を30年ぶりの水準となる0.75%程度に引き上げたことで、金融機関の「優勝劣敗」がより鮮明となりそうだ。金利上昇によって貸し出しで得られる利ざやも大きくなるため、ポイント付与や優遇金利を武器に融資の原資となる預金を潤沢に集められるメガバンクには追い風。一方、小規模な地域金融機関は利上げの恩恵を十分に受けられず、収益格差が広がる恐れがある。
 全国銀行協会の半沢淳一会長(三菱UFJ銀行頭取)は、30年ぶりの政策金利の水準を「歴史的な環境変化だ」と評価した。3メガバンクグループは最近の金利の上昇基調を背景に、2025年9月中間連結純利益がそろって過去最高を更新した。
 メガバンクをはじめとする大手行は預金をかき集めるため、ポイントや決済の利便性を売りに顧客の囲い込みを進める。インターネット専業銀行などを中心に優遇金利で誘客をしようとする動きも目立ち、SBI新生銀行は最大で年4.2%相当の預金金利を提供するキャンペーンを打った。
 全国地方銀行協会の片岡達也会長(横浜銀行頭取)も「有利な運用方法を求め、従来以上に預金の流動化が進む」と予測。給与振込口座への指定などを通じて、他行に流出しづらい「粘着性の高い預金」を確保することが重要になるとの認識を示す。
 貸し出し規模の小さい第二地銀や信用金庫にとっては、金利上昇がもたらす預金に伴うコストが重荷になるケースもある。ある地方信金の幹部は「貸出金利息が増えるよりも(預金の)支払利息の方がすぐに反応するので苦しい」と漏らす。追い込まれた地域金融機関が規模拡大を目指して経営統合に踏み切る可能性もありそうだ。
 金利上昇は債券価格の下落も意味する。保有する国債の価格下落で「含み損」が膨らみ、苦境に陥る地域金融機関もある。栃木信用金庫(栃木県栃木市)は保有国債の含み損が自己資本を上回り、9月に信金中央金庫による資本注入を受ける事態となった。「金利のある世界」が進展すれば、資金運用の巧拙もより問われることになる。 
〔写真説明〕利上げを決めた金融政策決定会合を終え、記者会見する日銀の植田和男総裁=19日、日銀本店
〔写真説明〕記者会見する全国地方銀行協会の片岡達也会長(横浜銀行頭取)=6月18日、東京都中央区