対中議員外交に首相答弁の影=自民・萩生田氏ら訪台ラッシュ

 台湾有事を巡る高市早苗首相の国会答弁に端を発した日中関係の悪化が、議員外交にも影響を及ぼしている。政府間関係を補完する役割があるが、超党派の「日中友好議員連盟」が模索した年内の訪中は困難な情勢。一方、自民党では台湾訪問が続く見込みで、濃淡が鮮明になっている。
 自民の萩生田光一幹事長代行は21~23日に訪台する予定。頼清徳総統との会談を調整中だ。政調会長時代の2022、23年にも、台湾に友好的だった故安倍晋三元首相の「後継者」として訪れている。
 台湾外交部(外務省)は今月、鈴木馨祐前法相や石破内閣で首相補佐官を務めた長島昭久衆院議員らが訪台すると発表した。河野太郎元外相ら麻生派の6人も24日から訪れることにしており、年明けにかけて台湾に渡航する日本の国会議員は30人ほどに上るという。
 台湾に圧力をかける中国が日本にも強硬姿勢を取る中、立て続けの訪問は日台連携重視の表れと言える。「中国には毅然(きぜん)と向き合う必要がある」。保守派のベテランはこう語る。
 一方、日中友好議連は17日の臨時国会閉幕後の中国訪問を以前から探っていた。だが、台湾有事は自衛隊が防衛出動する「存立危機事態」に該当し得るとした11月7日の首相答弁を受け、情勢は一変した。
 議連の森山裕会長(自民前幹事長)の意向を受けて自民の小渕優子氏や立憲民主党の近藤昭一氏が今月、中国の呉江浩駐日大使と水面下で接触したが、調整は進んでいない。議連幹部は「今は厳しい」と認めた。
 対中議員外交は長く中軸を担った自民の二階俊博元幹事長が政界を引退し、パイプが細った。公明党も重要な役割を果たしたが、与党を離れたこともあり、今回は目立つ動きがない。同党関係者は「本気で事態を打開するなら政治家が行かなければならない」と訴える。
 中国は今月に入り、航空自衛隊機に対するレーダー照射など軍事的な威圧行動を取るようになった。訪日自粛の呼び掛けなど当初の経済分野の動きから対応をエスカレートさせており、長期化も想定される。自民議員の訪台ラッシュには神経をとがらせそうで、日中議連幹部は「中国はますます固くなる」と懸念を示した。 
〔写真説明〕自民党本部に入る萩生田光一幹事長代行=10月7日、東京・永田町