自分のバイクが勝手に公道に移動させられて、なんと車体には「駐車違反」のシールが……そんなことが現実に起こっています。理不尽なケースに法律はどう対応しているか、弁護士に聞いてみました。
自分のバイクが勝手に移動されて… 車体にはまさかのシールが
これは、筆者(松田義人:ライター・編集者)の体験談です。数年前、知り合いのマンションを訪れた際、乗っていったバイクをその敷地内に停めておいたところ、敷地内のバイク駐車が認められていなかったらしく、バイクが公道に移動させられていました。
おそらくは管理人が移動させたのだと思いますが、そのバイクに「駐車違反」のシールが貼られていたのです。元々は敷地内に無断でバイクを停めた筆者が悪いのですが、しかし自分で停めたわけではない公道で、バイクが「駐車違反」とされるのはなんだか理不尽な気がします。こうしたケースに遭遇した際、はたして取り締まりを免れることはできるのでしょうか。
この疑問について、弁護士法人ユア・エースの正木絢生弁護士はこう解説します。
「管理人に公道へバイクを押し出され、その場所が駐車禁止区域だったため駐禁を切られたというのは、たしかに理不尽に感じられる場面です。しかし、こういった場面では、『1:公道上に〈違法な駐車の状態〉があったか』『2:その違反を誰の責任にするか』を分けて考える必要があります。
公道の駐車禁止場所にバイクが置かれていれば、客観的には駐車違反の状態ですが、本来責任を負うのはそこに駐車した者、本件の場合は道路上へ移動させた管理人側です。
ただし、実務では、その場で運転者を特定できない場合、ナンバーから車両の使用者に放置違反金を科す制度があり、通知は車両の使用者のもとに届くことになります。そのため、今回のエピソードの場合、通知はバイクの使用者である松田さん宛てに届きました。
もし『第三者が無断で移動させた』『自分は道路上駐車していない』と写真やマンションの管理会社の文書などで客観的に示すことができれば、『使用者に責任を負わせるのは不当だ』と争う余地はあるでしょう」(正木弁護士)
証拠あれば争う余地アリ! ただし実際には「違反金を覆す」ハードルは高い
ただし、現実的には「マンションの管理人なりがバイクを公道へ移動させた」ことを認めさせる必要があり、ここが新たなトラブルの出発点になることもある、と正木弁護士は言います。
「こういった場合、マンションの管理側が事実を認めなかったり、対応しなかったりすることも多いと思われ、これが新たなトラブルの出発点になることもあるでしょう。また、その事実を認めさせ、対応させるための証拠を揃えるハードルも高いため、実際には『違反金を覆せる』ケースは多くないとも思います。
そもそも、私有地への無断駐車がトラブルになる場合があることを意識し、『停めて良い場所かどうか』を事前に確認するのが、最も現実的な自衛策と言えるでしょう」(正木弁護士)
もちろん筆者は正木弁護士が解説するように本件について争うことはなく、そのまま違反金を支払いました。ややモヤモヤする一件ではありましたが、私有地への駐車の際は、まず「こんなことが起こり得る」と反省し、以降は事前にしっかりルールを確認し、可能な場合に限って駐車するようにもなりました。
ロックをかけていても、その気になれば、第三者が移動することができるバイク。こういったことを起こさないためにも、駐車する場合は正しい場所を選ぶべきだと筆者は思います。