【ニューデリー時事】インド洋の島国スリランカが先月下旬にサイクロン被害に見舞われ、死者・行方不明者は計約850人に上り、200万人以上が被災した。世界食糧計画(WFP)現地事務所のフィリップ・ウォード代表が13日までにオンライン取材に応じ、被害の影響は農業生産や国民の栄養状態、食料安全保障にも及ぶ恐れがあるとして支援を訴えた。
ウォード氏は、国土の大半で豪雨による洪水や地滑りが発生し、過去20年超で最も壊滅的な災害だったと指摘。WFPは調理セットや発電機のほか、既に8万人近くに栄養価を高めたビスケットを配ったといい、「今週末までに(中部の)キャンディやバドゥラといった各県で計67トン、少なくとも25万人分の食料を配布できると期待している」と語る。
また、「農地は水没し、作物が失われた。農家の人々が生計手段から切り離されている」と影響を危惧。2022年の経済破綻時をはじめ、国の危機に際して食料品が高騰したことに触れ「今後数カ月間で同じような価格変動が予想される」と懸念を示した。
政府は非常事態を宣言。被災者への現金給付を計画している。WFPは行政と連携し、復旧・復興に向けた取り組みを補完するつもりだという。ウォード氏は「被災者の再定住に向けた支援だけでなく、食料生産システムの再構築のためにもすべきことが多くある」と述べ、長期的なニーズを見据えサポートしていくと強調した。
〔写真説明〕スリランカ中部ヌワラエリヤ県で、サイクロンの被災者に緊急の食料支援を行う世界食糧計画(WFP)の職員=9日(WFPスリランカ事務所提供・時事)
〔写真説明〕世界食糧計画(WFP)スリランカ事務所のフィリップ・ウォード代表(同事務所提供・時事)