中3女子がムエタイ最年少プロ=山形在住、本場で白星デビュー

 【バンコク時事】格闘技ムエタイの本場タイで、山形市の中学3年生、門脇愛莉さん(15)が地元選手も含めて史上最年少でプロ登録され、白星デビューを果たした。競技歴1年8カ月での快挙。今後は山形とバンコクを往復しながら、世界チャンピオンを目指す。
 バンコクにあるムエタイの聖地ルンピニ・スタジアムで11月末に行われた女子ミニフライ級(47.62キロ以下)3回戦。試合終了のゴング後、地元のペッドガノッワン選手(19)と拳を交えた門脇さんの腕が高々と上がった。3―0の判定勝ち。「試合前は緊張していて不安だったが、楽しんで勝つことができてうれしい」と笑顔がはじけた。
 得意技は左前蹴り。デビュー戦に向けてスタミナをつけるとともに、反復練習で技を磨いた。試合では前蹴りやジャブ、ミドルキックで相手を圧倒した。最終ラウンドは首相撲で攻められる場面もあったが、終始危なげない試合運び。かつてタイで活躍し、今回セコンドについた師匠の斎藤智宏・日本ムエタイ連盟会長は「度胸がある」とうなった。
 「学校で嫌なことがあると落ち込んでしまう自分が嫌で、心も体も強くなりたい」と、斎藤会長が営む山形市内のジムの門をたたいた。動画サイトでトップ選手の勇姿を見たり、会長の話を聞いたりするうち、「本場で強くなりたい」と意識するようになった。
 タイの法律は、プロ登録できる年齢を15歳以上と定めている。門脇さんは、日本ムエタイ連盟とタイの有力ジムの共同推薦を受け、11月初旬の誕生日を待ってタイスポーツ庁に選手登録された。
 15歳でのタイ挑戦は「本当に何も分からず、かえって不安も恐怖もなかった」。両親に「楽しんでこい」「いつも周りの人に感謝するように」と背中を押されたというが、8月に行った武者修行は容易ではなかった。コミュニケーションが取れないもどかしさを味わった。男性相手のスパーリングでは手も足も出ず悔し涙を流すこともあったという。
 平日はほぼ毎日ジムに通い、休日は父親が自宅につくった専用施設でトレーニングを重ねる。高校進学後は、タイ政府が外国選手らに特別に発行する「ムエタイビザ」を取得し、両国を行き来するつもりで、斎藤会長は「チャンスでもあるがハードルも高いと思うので、バックアップしていきたい」と全面支援を誓う。
 門脇さんの目標は、世界タイトル戦に挑戦した後、東南アジアを中心とする多国籍格闘技団体「ONE Championship」の契約選手になること。「皆が憧れるようなかっこいい選手になりたい」と夢は膨らむ。 
〔写真説明〕プロデビュー戦に勝利して喜ぶ門脇愛莉さん(右)=11月29日、バンコク
〔写真説明〕デビュー戦に臨む門脇愛莉さん(左)=11月29日、バンコク