首都圏で相次いだ強盗事件を巡り、警視庁などの合同捜査本部が解析したスマートフォンは約750台に上る。首謀者は、捜査をかく乱するため秘匿性の高い通信アプリ「シグナル」で50を超えるアカウント名を使用。捜査ではそれらを一つ一つたどって、今回逮捕された4人の関与を突き止めた。
捜査本部がこれまでに逮捕した実行役らは50人を超える。ただ、いずれも募集から指示までSNSやシグナルを介して行われており、首謀者との面識はほとんどないとみられる。また、強奪金も複数の回収役を介して運ばれており、捜査は困難を極めた。ある捜査幹部は「匿名性を高める犯罪スキームが出来上がっていた」と話す。
捜査関係者によると、捜査本部の対象事件だけでなく、類似事件も含め計約750台のスマホを押収し地道に解析した。シグナルは通常、アカウントと携帯電話番号がひも付けられるが、事件では他人名義の「飛ばし携帯」やSIMカードなどが使われ、北米の番号とひも付けられたものもあったという。アカウント名は用途や相手によってたびたび変更されるなどしており、50を超えた。
また、防犯カメラ映像をつなぎ合わせる「リレー捜査」も駆使。回収役や強奪金の動きを追跡するなど証拠を積み上げ、首謀者に渡ったことを確認した。
フィリピンを拠点とした「ルフィ」と名乗る指示役らによる広域強盗事件では、指示役4人は同じ収容所にいたため、実行役への指示の発信場所や目撃証言などから裏付けを進めることができた。
一方、今回の首謀者は別々の場所で連携しながら指示を出していたとみられ、立証のハードルは高かった。親家和仁警視庁刑事部長は「一つ一つでは決め手にならないような情報をつなぎ合わせることで、事件の全体像を明らかにした」と捜査を振り返った。