日銀の植田和男総裁は1日、追加利上げの是非を18、19両日に予定される次回の金融政策決定会合で判断すると表明した。名古屋市での記者会見で、金融政策運営に関して「緩和度合いの調整が遅れると米欧のように非常に高いインフレ率になる」と指摘。後手に回れば大幅な利上げが必要となり、「混乱を引き起こしてしまう」と懸念を示した。
会見に先立つ講演で植田氏は、2026年春闘に向けた動きを見極めた上で、今月の会合で最終的に決断する姿勢を見せた。利上げについては、「景気にブレーキをかけるものではなく、安定した経済・物価の実現に向けアクセルをうまく緩めていくプロセスだ」と強調した。
今後は、金融緩和を志向する高市政権の理解を得られるかが焦点となる。植田氏は会見で、「(高市早苗)首相らと面談する中で、さまざまな論点について率直にいい話ができている」と説明。「今後とも十分な意思疎通を図っていきたい」と述べた。緩和度合いを適切に調整していくことで、「息の長い経済成長が達成できる」とも語った。
利上げの判断に当たっては、「賃金と物価がともに緩やかに上昇するメカニズムが、今後も維持されるかどうかが重要なポイントになる」と改めて言及。次回の決定会合に向け、本支店のヒアリングを通じ、賃上げに関する労使双方の情報収集に注力していると明らかにした。
〔写真説明〕金融経済懇談会で発言する日本銀行の植田和男総裁=1日午前、名古屋市中区

