【パリ時事】フランスで来年夏、志願制の兵役が始まる。ロシアの脅威に警戒を強めるマクロン大統領が27日、「危険を回避する唯一の策は備えだ」と、新制度創設を発表した。ただ、入隊候補となる若者の中には、戦争の足音が近づいてくるような事態に動揺を隠せない者もいる。
「歴史の要請があるたび、フランスの若者は身を投じ、動員された」。マクロン氏は27日の演説で士気を鼓舞した。2001年に停止した徴兵制を平時に復活させるのは妥当でないとした上で「若者は宝」と強調し、「祖国のために立ち上がる世代」だとたたえた。
国防省によると、新たな兵役は18~25歳の男女が対象。18、19歳が全体の8割、20~25歳が残り2割を占めるよう応募者から選抜する。任務は1カ月の初期訓練を含む10カ月間。配属先は国内で、海外・紛争地には派遣しない。
報酬は月額最低800ユーロ(約14万5000円)とした。同様の制度で来年から同2600ユーロ(約47万円)を給付するドイツの3分の1にも満たないが、財政健全化に取り組むフランスには精いっぱいの待遇だ。
26日実施の世論調査では、志願制兵役への賛成は62%と、反対の25%を圧倒。ところが当事者の18~24歳に限ると賛成43%、反対44%で、小差ながら否定的な回答が上回った。
仏各地でパリジャン紙の取材に応じた高校生は、志願制とはいえ兵役が導入される現実について「とても怖い」などと反応。女子生徒(16)は「義務にならないことを願う」とため息をつき、男子生徒(16)は「プーチン(ロシア大統領)と戦うのは無理。死ぬから」と拒絶した。
別の男子生徒は「第1次大戦の授業で見た通りだ。権力者が僕らを敵陣に突進させる」と批判した。仏軍制服組トップのマンドン統合参謀総長は今月中旬、「子供を(兵士として)失う覚悟」を持つよう呼び掛け、物議を醸したばかりだ。
一方で、入隊に前向きな若者も。「国と自由を守ることは大事。必要なら参加する」「軍隊を知る良い機会だ」との声が聞かれたという。
志願制兵役は、昨年の総選挙から分断が続く仏政界でも党派を超えて歓迎されている。求心力の低下が著しいマクロン氏には「国内に一体感を取り戻す」(ルモンド紙)好機と言え、国防とは別の思惑も見え隠れする。
〔写真説明〕27日、フランス南東部グルノーブル郊外で若者が集まる中で演説するマクロン大統領(AFP時事)

