海自でも使うんだ! 船だけじゃない海自で取れる「意外な資格」とは?

海上自衛隊では、船に関わる資格だけでなく意外な“陸のスキル”まで取得できます。知られざる海自の資格事情を紹介します。

自衛隊辞めた後も民間で通用するかも

「自衛隊で取れる免許」と聞くと、戦車や戦闘機に乗るための免許と思われるかもしれません。ただ、そのような特殊な乗りものでなくとも、自衛隊ではさまざまな免許を取ることができます。

 そのことは海上自衛隊も同様です。海自といえば「船乗り」「海のプロフェッショナル集団」というイメージがあるかもしれませんが、船の免許しか取れないわけではありません。

 自衛隊ですから、その根底には「自己完結」の精神がしっかりと根付いています。例えるなら「パンがなければ畑から作っちゃえ!」ぐらいの勢いで、D◯SH島のようにほぼなんでも自前でやってしまうDIY集団。だからこそ、多種多様な免許を隊員が取れるための下地が用意されています。

 代表的なものはやはり、小型船舶免許でしょう。1級も2級も操縦できる船の大きさは排水量20トン未満かつ全長24m未満と条件は同じですが、では何が違うのかというと航行範囲です。1級であれば制限がありません。小型船舶は港湾内での作業艇運転などに使うので、職場が海の上ならではの資格とも言えるでしょう。

 逆に護衛艦のような大型の船舶を操縦するためには海技士の資格が必要ですが、海自では独自の規定により、海技士に相当する資格を持っていれば艦艇の操船ができるのです。ただしこれは海上自衛隊の中でしか通用しないので、退職後に活かせないのはちょっと残念かもしれませんが。

 もちろん船の操縦だけではありません。物資補給の現場で欠かせないフォークリフトや移動式クレーン運転士、それに伴う大型特殊免許も一部の部隊で取得可能です。職種によっては「乙4」こと、乙種第4類危険物取扱者も取ることができます。

 どれも退職後でも使える資格ばかりなのですが、仕事の合間に勉強時間を捻出するのが大変な資格もあるので、「ここぞ!」といったチャンスが訪れたら一気に勉強して試験に臨む隊員が多いそう。

「海上自衛官は試験当日が海の上や当直なんてこともザラだからね……」と、海上自衛官で夫のやこさんもぼやいていました。

海自で取れる意外な資格

 というわけで、海自で取れる意外な免許や資格をいくつか紹介しましょう。

・移動式クレーン運転士
移動式クレーン車を操作するための免許で、岸壁や補給拠点などで大活躍。一部の陸上部隊で取ることが可能。子供の頃、巨大なクレーンを自在に操る姿に憧れた人も多いのでは?

・けん引免許
「けん引」と聞くと、トレーラー運転手を思い浮かべるかもしれませんが、海自でも大型物資を積んだトレーラーや特殊車両を移動させるときに必須です。総重量750kgを超える台車を引っ張れるこの免許、実は退職後にも役立つ超実用スキルです。一部の陸上部隊で取ることが可能です。

・乙種第4類危険物取扱者
通称「乙4」と呼ばれるこの資格、海自では燃料の管理などで必要になり、機関科の教育機関で希望すれば取ることができます。実用性の高い資格ですが、受験者が多く合格率が低めのため、試験勉強は計画的にこなす必要があります。

・アーク溶接・ガス溶接
主に応急工作員が取ることが多い資格。艦の修理や応急処置のときに欠かせないスキルです。機関科の教育機関で取ることができますが、比較的簡単に取れるので持っておくと便利かも。

・調理師免許
海自では食事も隊員が作ります。艦艇や陸上部隊などで隊員に食事を提供する給養員という職種があり、調理師免許はその専門教育中に取得することができます。カレーからフルコースまで作れる海自の艦メシマスター、給養員。部外の栄養学校へ入校して栄養士の資格を取得することもできます。

 海自の免許ライフは船の操縦だけじゃありません。フォークにクレーン、けん引に小型船舶、さらには隊員の胃袋まで、まさに「動かせないものはない」精神が詰まっています。

 ただし、そこは公務員。これらの資格は希望したからといって無条件に取らせてもらえるものではないのでご注意を。部隊において必要だと上長(上司)に認められて、初めて取得が許可されるため、業務に関係ないものはまず取れません。そこはご承知ください(厳しい…!)。

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