セルフプレーがデフォルトになった現代において、プレーファーストのため、良かれと思ってした行動が思わぬ事故の原因になっている可能性があるという。そんな乗用ゴルフカートのプレーで起こる問題について、四六時中ゴルフ漬けのロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が語る。
乗用ゴルフカートのプレーが当たり前になったのは約20年前。それまでは、キャディ付きの歩きのゴルフが普通でした。オールドゴルファーの多くは、キャディ付きでゴルフを覚えて、最近になって乗用カートでのゴルフをするようになったのです。つまり、乗用カートについては、オールドゴルファーも若いゴルファーも使用歴がほとんど変わりません。
ゴルフコースのスタッフに取材をすると、乗用カートの間違った使用法に困っている、という話をよく耳にします。一番多いのは、カートをどんどん先行させたことで、後ろの組が「もう打てる」と勘違いして起きる打ち込み事故だそうです。
プレーファースト。進行を優先するという考え方で、平成のある時期、カートをどんどん前に進めるのが良いという指導があったのは事実です。確かにその方がプレーは速くなりますが、ブラインドのホールなどで、まだ打っている人がいるのにカートが進んだからと打ってしまって打球事故になったり、打ち込んで揉めたり、トラブルの元になっています。
まだ、届くところに人がいるよ、という意味でカートはセカンド地点に止めておくようにしましょう。最後の人が打って、安全なところまで進んでからカートを動かすようにするのです。進行も大事ですが、このハウツーで取り返せないほどのスロープレーになったりはしません。
また、次のホールのティが渋滞して、前の組がいるときに、カートを後ろにつけるのは“あおり運転”になるという理由で、グリーンサイドでカートを止めたままというのもやめましょう。前の組のカートの後ろに人が通れる余裕を持って止めて待つのが正しいマナーです。その際に、前の組のプレーを邪魔しないように、おしゃべりを止めたり、余計な音を立てたりしないという最低限のマナーを守る前提です。
カートがグリーンの近くに止まっていると、グリーンを狙ったミスショットがカートに直撃する事故になります。また、カートは正面から飛んでくるボールは防げますが、横や後ろから飛んできたボールには無防備なので、大怪我をするような打球事故が起きる要因になります。カートを前の組のカートに寄せないのが、心配りの令和の新マナーだと言う人たちがいますが、少し考えれば危険極まりない愚行だと分かるはずです。騙されないように注意しましょう。
そして、運転するタイプのカートは、無免許や飲酒運転は御法度です。事故が起きたときに、無免許や飲酒運転の場合、保険の対象にならずに賠償責任が個人に来たりするからです。事故を未然に防ぐために、免許を持った人が責任を持って運転するようにしましょう。
ゴルフコースのスタッフに聞くと、カートの事故やトラブルは若者が多いと思われがちですが、大きな事故に関しては圧倒的にオールドゴルファーが多く、タチが悪いことに、説明しても自分たちが悪いと理解できないことも多くて、本当に困ると言うことでした。
確かに、カート先行し過ぎ問題や、あおり運転にあらず問題などを説明すると、若いゴルファーはすぐに理解して納得してくれますが、オールドゴルファーは自分で考えるのを拒否して、誰が言ったとか、権威付けにこだわって話が進まないことがあります。ゴルフコースのスタッフの苦労が想像できます。(文・篠原嗣典)
篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年東京都文京区生まれ。中学1年でゴルフコースデビューと初デートを経験しゴルフと恋愛のために生きると決意。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。ベストスコア「67」、ハンディキャップ「0」。
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