
<日本女子オープン 事前情報◇30日◇チェリーヒルズゴルフクラブ(兵庫県)◇6616ヤード・パー72>
苦い思い出はたくさんある。「“あれ”とかですよね。でも、いい思い出のほうが強く残っています」。プロアマ大会で18ホールを回った吉本ひかるは、笑顔で時間を6年前に巻き戻した。
今回と同じコースで開催された2019年「日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯」。プロ3年目だった吉本は、優勝した畑岡奈紗を2打差の2位から追った最終日に「80」を打った。左ドッグレッグの7番パー5は2打目をガケ下に落とすOBで、+4の「9」。集中力はプツンと切れた。後半は4ボギーを喫して8オーバー。バーディは一つも奪えず、「80」の大たたきで、23位の終戦だった。
「確かにいろいろあったけど、初めてメジャーを最終日最終組で回れたし、すごくいい思い出です。最終日は(畑岡)奈紗ちゃんが抜けていたし、緊張していたわけじゃないんですよ。でも、やっぱり一番はホールインワンですね」
2日目の17番パー3。6番アイアンでのティショットは直接カップに飛び込んだ。ツアーでは2度目のホールインワンを“ダンク”で達成し、賞金200万円を獲得。「ホント、びっくりしました」という驚弾が一番の思い出だ。
あれから6年。23年「明治安田レディス」ではツアー初優勝を果たした。2季連続のシード選手として臨む今季はトップ10入りが一度もなく、メルセデス・ランキングは112位と低迷しているが、「調子は決して悪くはないと思っている。パットがもう少ししっくりくるように修正したい」と話し、「でも、やっぱりここかな…。気持ちの問題ですね」とポンポンと胸をたたいた。
「昔は良くも悪くも経験がないから、とりあえずやるって感じだった。そこから、いろんな経験をすると、分かってくる。分かってくると、いろいろ考えてて怖さも出る。経験が邪魔をするんです。分かったうえで、いかにシンプルにやれるかが大事だと思う」
今週のテーマは「シンプル」。だが、それが最も難しい。
「昔と同じ気持ちでやるのは無理だけど、あのころのようにシンプルにいきたい。これまでの経験を生かさないと。あとは完璧を求めないことかな。ミスが出ても、心の許容範囲を広げたい」。今大会がツアー237試合目。プロ9年目の26歳が、原点回帰で6年前のリベンジを目指す。(文・臼杵孝志)