「造船やめます」のはずが? 追浜の造船所が一転して存続のナゼ 「船として受注したのではない」って!? 住重

新造船建造からの撤退を決めていた住友重機械工業が、今治造船からタンカーの建造を受注しました。新造船ヤードとしての役目を終えるはずだった横須賀・追浜の造船所が存続します。なぜ事態は変わったのでしょうか。

撤退予定の住重が協業でタンカー建造継続

 2026年をもって新造船事業から撤退することを決めていた住友重機械工業グループが、今治造船と協業し、横須賀造船所でタンカーの船体建造を行うことを明らかにしました。住重広報は「造船から撤退する方向は変わらない」と話しますが、東京湾から消えつつあった商船の新造ヤードが一転して存続となったのは、どのような理由なのでしょうか。

 引き続き大型船を手掛けることが決まったのは、日産自動車追浜(おっぱま)工場の隣に位置し、商船の建造や修繕を手掛ける住重傘下の住友重機械マリンエンジニアリング横須賀造船所です。

 2000年代以降の同社は、10万重量トン級のアフラマックスタンカーに特化する戦略を取っていました。国内外から高い評価を得ていたものの、船価の変動と鋼材や資機材価格の高騰に加え、中国や韓国の造船所もアフラマックスタンカーに参入したことで競争環境が悪化。2024年2月に商船の新造船事業から撤退を表明し、新規受注を停止していました。

 2026年1月の引き渡しを建造最終船とし、その後は洋上風力発電の浮体式構造物などの製造にドックを活用する方針でした。しかし、洋上風力発電は世界的なインフレーションやサプライチェーンの逼迫などの影響を受けて開発コストが大幅に上昇。三菱商事グループを中心とするコンソーシアムのようにプロジェクトの中断や撤退が相次ぎ、事業として逆風が吹いているのが現状です。

 一方で新造船需要は世界的に伸びており、国内造船各社は成約を積み重ねたことで手持ち工事量は3年分を確保。商談では2029年納期という話もでています。さらに、米トランプ政権の方針で中国建造船への風当たりが強まる中、官民あげて日本の造船業の建造能力を大幅に引き上げる機運が高まっています。

 ただドックを含めた新造ヤードを新たに作るのには大規模な設備投資が必要です。需要が一気に落ち込んだ場合、新造設備をどう維持していくのか課題もあります。このように建造能力を増やしたい今治造船側と、洋上風力発電の採算が見込めるまで工場の稼働を維持したい住重側の思惑が一致し、横須賀造船所での船体建造に繋がったとみられます。

2028年までは稼働確定!

 住重グループが横須賀造船所で船体を建造するのは、今治造船と日本シップヤード(NSY)が丸紅の協力を得てギリシャ船主から受注したアフラマックスタンカー2隻です。1隻目は2027年、2隻目は2028年の竣工を予定しています。同契約は2025年9月26日に公表され、今治造船にとっては2008年にアフラマックスタンカーを引き渡して以来の受注です。

 これにより、横須賀造船所では2028年まで新造船の船体建造が行われる見込みです。アフラマックスタンカーは需要があり、今後の動き次第では、受注したタンカー以外の船体建造を手掛けるかもしれません。

 ただ、住重は今回の件について、造船撤退の方針は変えず、「大型の鉄鋼構造物という位置づけで今治造船から受注した」と話していました。あくまでも鉄鋼構造物として製造するのであって、新造船事業の再開ではないということです。

 住重は今年、三井海洋開発(MODEC)との間でFPSO(浮体式石油生産・貯蔵・積み出し設備)の前側の建造契約を結んでおり、今回のアフラマックスタンカーと合わせて大規模な船体の製造が続きます。

 なお、今治造船は一連の動きについて否定はしなかったものの、「コメントは差し控えさせていただきます」としました。

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