米軍が初公開「次世代の超長~く飛ぶ核ミサイル」搭載すれば旧式機でも攻撃力大幅アップ! 中国&ロシアを牽制する意図も

米空軍が長らく秘匿されてきた新型の核搭載型の巡航ミサイルを公開しました。これが実用化されると非ステルスのB-52爆撃機でも最新のB-21「レイダー」爆撃機に比肩する核投射能力を付与することができるとか。どのような性能なのでしょうか。

50年ぶりに開発された核搭載巡航ミサイル

 アメリカ空軍は2025年7月、長らく秘匿されてきた新たな戦略核兵器の姿をついに公開しました。発表の中心となったのはAGM-181巡航ミサイルです。このミサイルは「LRSO(ロングレンジ・スタンドオフ)」と呼ばれるもので、その外観が初めて公になったことは、冷戦終結以降の核抑止体制に新たな転換点が訪れたことを告げる象徴的な出来事といえるでしょう。

 アメリカの核戦略は、通称「核の三本柱(トライアド)」呼ばれる体系に支えられてきました。3本柱とは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、そして戦略爆撃機に搭載される巡航ミサイルのことを指します。

 このうち爆撃機部門は、抑止力としての柔軟性において他を凌駕する一方、防空網の進化や兵器の老朽化という課題に直面してきました。今回のLRSO公開は、この「第三の柱」を21世紀半ばに至るまで持続可能な形で刷新するという、アメリカの決意を如実に示すものです。

 AGM-181 LRSOは飛距離2500km以上と推定される長射程の巡航ミサイルで、それを含む性能の詳細は依然として厳重に秘匿されています。公開された映像では、エンジンの吸気口が確認できません。これは構造上巧妙に隠されているのか、あるいは意図的に省略されたのかは不明ですが、少なくともステルス性に直結する部分を覆い隠している可能性があります。

 現行のAGM-86B空中発射巡航ミサイル(ALCM)は1970年代に設計された兵器であり、それから半世紀近くのあいだに防空レーダーや迎撃システムが飛躍的な進歩を遂げているため、性能的な陳腐化に直面しています。そのため、後継となるLRSOは必然的に、敵防空圏を突破し目標に確実に到達するための低被探知性が最優先事項として求められたと推察されます。

 興味深いのは、LRSOが極超音速兵器ではなく亜音速・低被探知型であると推定される点です。米国があえて「速度」ではなく「隠密性」と「確実性」を重視したことは、核抑止という究極の任務において、突破力よりも安定性と制御性を優先したことを物語っていると言えるかもしれません。

中国とロシアに対するけん制の意味も

 搭載予定の弾頭は、現在開発中のW80-4核弾頭です。その威力は約150キロトンに達しますが、これは広島型原爆の約10倍に相当するとか。そのことを考えると決して低威力とは言えませんが、それでもかつて軒並み「メガトン級」の破壊力を誇った冷戦期の戦略核兵器と比べると、それらとは異なり小型化と精密誘導を前提とすることで、柔軟な運用と抑止力の確実性を両立させている模様です。

 LRSOは、まずB-52J爆撃機に搭載される予定です。B-52Jは、1950年代に初飛行したB-52「ストラトフォートレス」シリーズの最新モデルです。最新の電子機器や新型エンジンを備え、さらに新たなAGM-181 LRSOの運用能力を獲得することで、21世紀半ばに至ってもなお核抑止の主力にとどまり続けることになります。

 さらに、KRSOは新型のステルス爆撃機B-21「レイダー」への搭載も考えられています。B-21は将来的にB-2やB-1Bを代替し、より深く敵中枢に接近して爆弾などを投射できる戦略爆撃機として導入が計画されていますが、射程の長いLRSOは敵の防空の外側から発射可能です。そのため、これを使えば非ステルス機のB-52Jでも、その抑止力はB-21に劣らないと言えそうです。

 アメリカ国防総省の計画によれば、LRSOは総計1020基の調達が予定されており、1基あたりのコストは約1400万ドル、ミサイルを30年間の寿命にわたって維持するコストなども勘案すると、その総額は日本円換算で約3兆円にも達するとのこと。冷戦後における核兵器のアップデート計画としては最大級の事業になります。

 なお、アメリカがこの規模の投資を決断した背景には、旧式装備の更新だけが理由ではなく、ロシアおよび中国との戦略的な競争の激化があります。

 ウクライナ戦争以降、ロシアが核抑止の閾値(しきいち)を引き下げるかのような言動を繰り返し、中国もまた急速に核戦力を増強しつつあります。こうした現実を突きつけられたことで、アメリカも「冷戦後」の延長線上ではなく、新たな大国間競争時代における核抑止戦略を再構築する必要性を痛感させたと言えるのではないでしょうか。

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