驚愕の“宙返り”キメた「米国初のジェット輸送機」どう実現? 裏には“緻密極めし計算”が…「ボーイング初のジェット旅客機」の始祖

現在のジェット旅客機のスタイルを確立させた“始祖”「ボーイング367-80」。この機は“伝説の宙返りフライト”を実施した伝説を持ちます。このフライトはどのように実現したのでしょうか。

戦闘機ばりの挙動を輸送機で…

 ボーイング367-80、通称「ダッシュ・エイティ」は、アメリカ初のジェット輸送機で、現在のジェット旅客機のスタイルを確立させた“始祖”といえる機体の1つに挙げられるでしょう。そればかりではなく、この機が今も歴史にその名を残すのは、公衆の面前で、こうした航空機としてはありえない飛び方をしたためです。この“伝説のフライト”は、どのように実現したのでしょうか。

 ダッシュ・エイティは1954年に初飛行。ボーイング初のジェット旅客機「707」と米空軍が採用した空中給油機「KC-135」の元になった機体で、特に707はボーイングを民間航空機の覇者に押し上げる源となったモデルといえます。

 その「ダッシュ・エイティ」を一躍有名にし、今も語り継がれているのがアクロバット飛行の技の1つで、機体を横に回転させて宙返り状態になる「バレル・ロール」を大勢の観客の前で披露したことです。

 飛行中に胴体を横へ一回転させるというのは、戦闘機など軽快な機体でしか見ることができない技です。それを「ダッシュ・エイティ」がやってしまったのです。

 1955年、アメリカ・シアトルの東にあるワシントン湖での水上艇レースの開催が開催されました。このときの観衆は、20万人とも30万人とも伝えられています。その上空を、当時はまだ目新しかったジェット旅客機の存在をアピールするため、「ダッシュ・エイティ」が会場の上空を通過する予定でした。

 その飛行で操縦輪を握ったのが、アルヴィン“テックス”ジョンストンでした。「ダッシュ・エイティ」の初飛行も担ったジョンストンは、関係者への予告もなく高度約120mで一度「バレル・ロール」を行い、再び会場上空へ戻り横転を繰り返したのです。この時、湖上の船にいた当時のボーイング社長ウィリアム・M・アレンの周りで拍手が起こりましたが、アレン自身は顔面蒼白になったと伝えられています。

「米国初のジェット輸送機の宙返り」裏に秘められた計算

 アレンと言えば、ボーイングのジェット旅客機群の開発を進めた社長として知られていますが、「バレル・ロール」を披露した翌日にアレンに呼び出されたジョンストンは、臆することなく「バレル・ロール」終了時に高度が約490mに上がっていたうえ、常に1G(Gは重力を示し1Gは地球上の一般的な重力)をかけていたので燃料送付ポンプも正常に作動していたと、決して危険や無謀な行いではなかったことを説明。クビを免れたと言います。

 これには後日談もあり、その後、ジョンストンは第1時世界大戦時のエースパイロットで航空会社のCEOだった人物から「ロールが遅い」と怒鳴られたと言います。ジョンストン自身は1914年生まれで、第二次世界大戦も経験しています。当時はこうした“型破り”な者たちが空を自由に飛んでいたのでしょう。

 とはいえ、ジョンストンは無謀ばかりのパイロットではありませんでした。アクロバット飛行は決して危険でなく、むしろ性能を熟知し計算したうえで実行し、それを理論的に経営陣へ説明できる力量がありました。テストパイロットとしての力量も会社が認めるところで、その後も707で起きた訓練中の事故の後では機体の改良を進言してもいます。

 ジョンストンがパイロットとして活躍した時代は、プロペラからジェットへ航空機は目覚ましい進化を遂げ、その分、未知の分野への挑戦も迫られました。成功へは一見型破りとも思える度胸と、理論に裏打ちされた操縦技術が欠かせず、ジョンストンはそれらを兼ね備えたテストパイロットだったのでしょう。

「バレル・ロール」を行った「ダッシュ・エイティ」は、今も米国ワシントンD.C.にあるスミソニアン航空宇宙博物館で大切に保存され展示されています。歴史に名を残す多くの航空機の中でひときわ大きく目立つダッシュ・エイティは、米国の航空の歴史を示しつつ在りし日のアクロバット飛行のエピソードも伝えています。

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