
<スタンダード・ポートランドクラシック 最終日◇17日◇コロンビア・エッジウォーターCC(オレゴン州)◇6497ヤード・パー72>
娘・明愛の米初優勝を見届けた瞬間、岩井姉妹の母・恵美子さんは両手で顔を覆い、涙を流した。その肩にそっと手を回した父・雄士さん。メキシコに続き、ポートランドでまたうれしい家族写真が1枚増えた。
母は涙した理由を、「千怜が勝ってから、明愛を見ていてつらいのも分かっていた。それを思い出して…」と明かす。5月にメキシコで行われた「リビエラマヤオープン」で、先に米ツアーの優勝カップを掲げたのは妹の千怜だった。明愛自身も、優勝直後に「(千怜が)1勝して正直焦りもあって、早く優勝したいと思っていた」と話していたが、その気持ちを誰よりも理解していたからこそ流れた涙だった。
今週は恵美子さんが“明愛チーム”、そして雄士さんが“千怜チーム”と家族で決めていた。「朝からドキドキしていました。言葉がないくらいうれしかった。ひさしぶりに大泣きしました」。母にとっても、胸の高鳴りが抑えられない18ホールだった。
そして、その気持ちは千怜の組についていた父も同じ。「カップインするまで胸が苦しかった。苦しい感じはいつもですよ。まず予選ラウンドを通るまで苦しくて、次は最終日のホールアウトまで苦しいんです」。ただ、その後にこう続ける。「こんなにドキドキさせてくれる娘はいない。幸せです」。
父は2人の性格の違いを、こう表現する。「簡単にいうと、千怜が几帳面で明愛は大ざっぱ。だけど、蓋を開けてみると明愛のほうが繊細で、千怜のほうが気持ちが強い」。今年の明愛は優勝目前まで迫りながら2位に終わった試合が2試合あった。「勝たせてくれって。あれだけのプレーをして勝てないんだもん。ゴルフは運もありますよね」。“繊細”な娘を気遣ってきた。
今週は明愛が優勝を手にしたが、妹の千怜も最終日にイーグルを2つ奪うなど「64」と猛追。一時は1位と2位に姉妹が並ぶ時間もあった。母は「追いかけてきたのは…仕方ない。頑張れって。頑張ってるなって」と、その時のことを思い出し大笑い。父は「行け! と思ったよ」と、それぞれを応援していた。
2人に共通するのは、孝行娘たちの活躍を喜んでいる表情だ。母は「気持ちを切り替えて、また来週も。きっと余韻に浸ることはないと思う」と、さらなる活躍に期待を寄せた。父は「もう(シーズンが)終わりでもいい」と笑う。ただもう少し、いつもの“胸の苦しさ”とお付き合いする必要がある。
「日本の試合(TOTOジャパンクラシック)に出た時が楽しみ。メジャーじゃないけど、凱旋なので。夢みたいです」(雄士さん)。明愛は、涙する母の姿を見て、「日頃支えてもらっている。きょうも一日ずっと、今週もずーっと見守ってくれていたので、うれしかったです」と感謝の気持ちを述べた。まだまだ岩井家の挑戦は続いていく。