「イスラエルの最新ステルス戦闘機を撃墜! 画像あるよ」←胡散臭いんだけど本当か?

イスラエルが突如としてイランに対し航空攻撃を仕掛けました。それに対し、イランは反撃。そのなかで最新のステルス戦闘機を撃墜したと報道しました。ただ、この画像をよく見ると、どうも胡散臭いのです。

イスラエルの最新ステルス戦闘機が撃墜された!?

 2025年6月13日、かねてから緊張が高まっていた中東の火薬庫が再び大きく揺れました。イスラエルがイランに対し大規模な航空攻撃を敢行したのです。その目標は明確で、イランの核開発計画を物理的に遮断し、イスラエルの生存権を守ること、つまり、核の「臨界点」に達する前に、それを押し戻すという、先制攻撃の決断でした。

 イスラエル軍は、この攻撃によってイラン国内の核関連施設を無力化し、加えて軍の高官数名の排除に成功したと発表しています。作戦は数百機の軍用機と長距離スタンドオフ兵器によって遂行されました。

 しかしこの作戦の最中に、ある報道が世界を駆け巡りました。イラン当局が「イスラエル空軍のF-35を撃墜した」と発表したのです。イランメディアの報道によれば、地対空ミサイル部隊がステルス戦闘機を捕捉・迎撃し、撃墜に成功したといいます。さらにその「残骸」と称する画像まで公開され、「史上初の実戦における第5世代戦闘機の撃墜」だと主張しました。

 公開された画像には、破壊された航空機の一部らしき金属片が映っていました。しかし、それはF-35とは似ても似つかぬもので、画像は信頼に足る証拠とは到底言えず、むしろイタズラかプロパガンダ用の捏造を目的とした、生成AIを使用したフェイク画像であると考えられるものでした。

 この点で想起されるのが、1999年のNATO(北大西洋条約機構)によるユーゴスラビア爆撃に投入されたF-117「ナイトホーク」ステルス機の撃墜例です。アメリカ空軍のF-117は当時、すでに旧式化していたユーゴスラビアのソ連製S-125地対空ミサイルによって撃ち落とされてしまいました。この機体はユーゴスラビア側に回収され、残骸が公表されました。現在も、ベオグラードの航空博物館の展示物として一般公開されています。

 これに比べ、今回のイラン側の主張は証拠能力において極めて脆弱です。

自国民に向けての正当化だった可能性も

 仮にF-35が本当に撃墜されていたのであれば、イラン当局はその残骸の一部だけでも誇示したに違いありません。それがなく出所不明のAI画像しか出せないということは、撃墜という主張自体が極めて怪しいと言えるでしょう。

 とうぜん、理論上F-35が無敵というわけではありません。高度なステルス性能を有していても、古い地対空ミサイルに撃墜されてしまった前述のF-117の例もあります。イスラエル空軍のF-35は、1999年当時のF-117と比べて戦術データリンクや電子戦能力において段違いに優れており、対空兵器の脅威に対しては複数の手段で回避・妨害措置が講じられています。ただ、そうは言っても敵の防空網から100%逃れられるわけではないため、被撃墜のリスクは常にあります。

 今回の事案において、F-35が撃墜されたとの発表は、戦術的な意味よりも政治的な意図が先行した情報戦の一環として見るべきかもしれません。イラン側は、イスラエル空軍の作戦によって自国が被った戦略的損失に対する国民への言い訳(自己の正当化)が必要であり、そのために、敵(イスラエル)を象徴する兵器といえるF-35を撃墜したという「勝利神話」が喧伝されたとみるべきかもしれません。

 これらを鑑みると、今回のケースは逆に、イランがF-35について大きな脅威として捉えていることの証左だと言えるのではないでしょうか。

 結論として、イスラエル空軍のF-35が撃墜されたというイランの主張は、物証の欠如、AI生成画像という低信頼の「証拠」、そして過去の実証済み撃墜事例との対比を行うことで、信憑性を著しく欠いています。確かに第5世代戦闘機が実戦で撃墜される日は、いつか来るでしょう。しかし、その日は2025年6月13日ではなかった模様です。

 ちなみに、イスラエルが放った先制攻撃は、その後イランが報復攻撃を行ったことで、終わりの見えない負の連鎖が続くかと思われましたが、11日後の6月24日、突如として両国は停戦に合意しています。戦いが終われば、本当にF-35Aが撃墜されたのか明白になるかもしれません。

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