片山晋呉と丸山茂樹は「手が柔らかい」から繊細なタッチが出せる スタート前は練習よりも手のストレッチをしよう

朝コースに行ったら、一所懸命ボールを打ったりパター練習をするアマチュアは多い。ただ、「それよりも朝イチは手をもみほぐすことが非常に大事」とプロコーチの辻村明志は語る。その意味とは何だろうか?
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久々のラウンド。さて、皆さんはコースに着いたら、まず何をやるでしょうか。レストランで腹ごしらえ、ロッカールームでストレッチ、あるいはボールに当たるかどうか心配で練習場に直行!……いろんな準備の仕方があるかと思います。どんな形でもいいので、ラウンド前に自分なりのルーティンを持つことは、とても重要です。

これはプロ、アマ問わずいえることですが、ひとつだけ絶対にやってほしいことがあります。それは手のヒラ、指、手首を十分にほぐすことです。とても単純なことですが、極めて重要なこと。実際にプロを見ても、手を大事にしている人が案外、少ないことに驚かされます。それが勝負どころでの大きなミスへとつながることだって少なくありません。

そもそも手は、人間の体の中でも最も器用で繊細、敏感な部位です。直立二足歩行によって、手を自在に扱えるようになったことが、地球上の全ての動物の中で人類が最も進化した大きな理由にもなっています。ならばこの手の感性を文字通りフルにゴルフに生かさない“手”はありません。

手が硬いままでは、なかなかヘッドの重さを感じることができないでしょう。これはゴルフのクラブに限らず、どんな道具でも一緒です。道具の重さを見失うと、どんな道具でも自在に動かすことはできません。たとえばパッティングでは、ヘッドの重さを感じることなしに、繊細なタッチは出せません。アプローチでは、柔らかいボールも打てません。もちろん打ち方も大事ですが、打ち方ばかりに気を取られていると、手はどんどん硬くなるばかり。スタート前に練習グリーンに直行するにしても、まずは両指を広げて、指を折ったり曲げたり、手のヒラをもみ、クラブを持ってグルグルと回して手首を柔らかくすることから始めてみましょう。

スタート前の練習グリーンでは、打つことやカップに入れることより、自分が気持ちのいい距離をコロがす意識を持ってください。なぜなら、その方が手がより柔らかくなるからです。「手堅い」という言葉があります。より慎重に、より丁寧にという意味で使われます。しかし「手堅い」のと「丁寧」は違うとボクは思います。

パッティングに限らず、もちろん丁寧に練習することは大事ですが、手は可能な限り柔らかく、そして1球1球大事にボールを打つ。それがゴルフに求められる丁寧だと、ボクは考えています。

片山晋呉先輩は、ボクが日大に入学した時の4年生。当時から雲の上の存在でしたが、プロになってからもその練習を見せてもらったり、また故・荒川博先生との縁もあってお話しをする機会をいただいたりしています。先輩の練習への姿勢、あるいはゴルフに対する考え方には驚かされることが多いのですが、いつも何より驚かされるのが手の柔らかさです。その柔らかく、しなやかな手は、まるで女性の手のヒラのようです。ヘッドを柔らかく使ってアプローチを打つのです。私の尊敬する丸山茂樹先輩も同様に、手のヒラが非常に柔らかくしなやか。グリップ圧も非常に柔らかく、パットで繊細なタッチを生み出していました。

片山先輩と親しい記者の方に聞くと、片山先輩は2歳からクラブを握って以来、手のヒラにマメができたことがないそうです。あれほど練習するにもかかわらずです。しかし、先輩はこうも言われたそうです。「お箸だって毎日、握っている。でも、手にマメができることなんてないだろう」。そのとおりです。思えば片山先輩は、勝負どころの場面ではグローブを外して、手をもんでいるような仕草を見せることが何度かあります。無意識の行動なのでしょうが、緊張して手堅くなりがちな場面では、手を柔らかくして緊張をほぐし、その感性を十分に活用しようとしているのではないでしょうか。

考えてみれば手にマメのできる一流プロがいるでしょうか。強過ぎず弱過ぎず、クラブを持つのに必要な強さで握り、手を柔らかく使って自在に動かせるから一流なのでしょう。さて、スタート前に指を曲げたり伸ばしたり、手のヒラをもんで血行を良くし、手首をグルグル回す。そんな準備は誰にもできることです。一流になれなくても、しかし一流に近づく権利は誰にだってありますよ。

■辻村明志
つじむら・はるゆき/1975年生まれ、福岡県出身。上田桃子、六車日那乃らのコーチを務め、プロを目指すアマチュアも教えている。読売ジャイアンツの打撃コーチとして王貞治に「一本足打法」を指導した荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフの指導に取り入れている。元(はじめ)ビルコート所属。

※『アルバトロス・ビュー』853号より抜粋し、加筆・修正しています

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