
松山英樹らトッププロのキャディを務めてきた進藤大典氏が6月15日、都内のインドア練習場でジュニア育成のための「進藤大典スペシャルセッションイベント」を行った。進藤氏は2021年から中学・高校男女の各部門別にジュニア大会を開催しており、昨年大会の各部門上位5人を招待してゴルフ界の“最先端”を伝えた。
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試合以外でのイベントは初開催となる。「試合は年に1回なのですが、次に会うのが1年後ではもったいないと思っていました。ジュニアからも練習ラウンドのやり方を教えて欲しいという声もあったので、さらなる成長をサポートするイベントを行いました」と試合以外でもひと肌脱いだ形になる。
イベントには進藤氏のほか、鍼灸師・スポーツトレーナーの工藤健正氏と、タイトリスト初のパフォーマンススペシャリストの青島賢吾氏の二人をゲストに招いた。工藤氏は、かつて世界ランキング1位のリディア・コにも帯同トレーナーを務めた経験を持ち、現在も国内のトップ選手のサポートを行っている。
PGAツアーを戦う9割以上の選手が受講している「DECADE(ディケイド)戦略」の日本唯一の認定講師でもある青島氏。スコット・フォーセット発案のデータに基づくコース戦略とメンタルは、米国ではいま主流となっている。進藤氏を交えて3人からトップ選手の取り組みや世界の最先端をジュニアに伝えていた。
青島氏の戦略のセッションは一般アマチュアにもとても参考になるので一部紹介しよう。
まずシチュエーションを挙げて問題を出す。「ピンまで残り110ヤード、ボールはフェアウェイ。快晴無風のゴルフ日和。ピンは手前から5ヤード、右から3ヤード。あなたはどこを狙いますか?」。ピンをデットに狙う、上りのパットを打つために手前を狙う、ピンよりも奥目を狙うなどの選択肢を用意し、それぞれに該当する狙い方に挙手を求めた。
ウェッジの距離だしピンをデットに攻めるといいたくなりそうだが、正解はピン左奥目だった。右打ちのプレイヤーは狙ったショットよりもつかまれば左奥に飛び、薄い当たりだと右手前に落ちる。左斜めのゾーンになっているのは全員に共通する。「左奥目を狙っていれば、ミスしてもグリーンに乗せることができます。グリーンを外すとボギーの可能性も出てきます」などと説明した。
実際に同じシチュエーションで、プロ予備軍の米国大学ゴルフ部の複数人にピンをデットに狙った場合とピン左奥を狙った場合のテスト結果を見せてくれた。左奥を狙った場合パーオン率はほぼ100%だったが、ピンを狙った場合、右手前にショートする選手が多く、パーオン率は60~70%に落ち込むデータまであった。パーオンを逃せばボギーの確率も高まることも挙げた。
また、パッティングに関して昔からよく言われる「届かないと入らない」という名言も否定する。「オーバーさせようとすると入る確率を下げ、3パットの確率を挙げている事実がある」。オーバーさせる意識を持つとタッチが強くなって入りラインが限られる。また、3割ぐらいは1メートル以上オーバーする可能性が高まるというデータを紹介。青島氏は「6メートル前後で4回に1回はショートさせるのが理想。入らなくても“お先”のタップインで流れよくでき無駄な3パットを打つことが無くなる」などと解説した。
日本ではまだあまり浸透していない戦略を語った青島氏は「まだまだ障りの部分ですが、一定の基準を持って戦略を立てると、無駄なボギーやダブルボギーを無くして、スコアはまとまります」と話した。
昨年の高校男子の部を制し、現在は法政大学のゴルフ部で腕を磨く川口史(ふみと)さんは、「僕は割と保守的にやっている方だと思うんですけど、ピンを狙いたいという欲をけっこう出ていたので、そういうのはよくないと学ぶことができましたし、トレーニングもどういう風にやるのがいいかとかストレッチの重要性を学びました」と学びの時間になったという。昨年の優勝の副賞として国内男子ツアー「ANAオープン」に進藤氏とタッグを組んで出場する。
イベントを終えて進藤氏は、「工藤さんのお話はいかに普段から考えてやっている人とやれていない人で差が出ると分かりました。青島さんは、圧倒的な知識と日本で今これだけアドバイスできる人はいない。2人の貴重なお話は将来の日本を背負うジュニアのレベルの底上げにつながると思います」と話した。今秋には5回目のジュニア大会の開催も予定している。進藤チルドレンがプロの世界に羽ばたくのが楽しみだ。
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