
敷地内、滑走路の下に2つの墓が埋め込まれている珍しい民間空港がアメリカにあります。なぜこのようなことになったのでしょうか。
2つの墓の上に滑走路
ニュースなどで取り上げられることもありますが、アメリカ海兵隊普天間基地には飛行場のなかにお墓があり、墓参のためにお墓を持つ住民たちは年に一度基地への立ち入りが許可されています。実は普天間基地のように、敷地内にお墓がある民間空港がアメリカにあります。なんとそのうちの2つは、滑走路に埋め込まれているのです。なぜこのようなことになったのでしょうか。
この滑走路にお墓が埋め込まれた空港は、ジョージア州のサバンナ市にあるサバンナ・ヒルトンヘッド国際空港です。ここには、滑走路に埋め込まれた2つ以外にも、複数の墓が空港内に存在しています。その位置は衛星画像にもくっきりと映っていて確認することができます。
なぜこのようなことになったのかは、この空港の歴史を振り返ることで判明します。話は第二次世界大戦中の1942年にまでさかのぼります。
当時のアメリカ陸軍省は軍備拡張のためにサバンナ市に飛行場を建設することになりました。その用地を確保するため、軍とサバンナ市は広さ1100エーカーの土地の賃借契約を結びました。
しかしその後、軍はこの飛行場を爆撃機の乗員養成に使用することになり、当初の計画よりも大きな飛行場を建設することになりました。そこで、新たな用地を取得する必要があったのです。
100以上あった墓…なぜ4つだけ残った?
そこで白羽の矢が立ったのが、ドッドソン家が1800年代から所有している農場でした。この土地のなかには、一族の私有墓地が含まれていました。
軍は土地を所有していたドッドソン家と合意を交わすことになりましたが、その合意の内容には用地内にあるおよそ100の墓地は移転すること、そして先祖が眠る4つの基だけは移動しないという条件が付けられました。
第二次大戦後、飛行場は空軍基地から国際空港へと変わりましたが、ドッドソン家との合意はその後も尊重され、4つの墓は今でも空港の敷地内にあり、うち2つが滑走路の舗装の中に埋め込まれるように存在しているのは先述のとおりです。なお、同空港には2本の滑走路があるものの、地下にお墓がある滑走路は「空港で最も利用されている」と公式サイト上で紹介されています。
現実的にこれらのお墓をお参りすることは難しいと思われますが、サバンナ空港を離着陸する航空機は、今でもドッドソン家のご先祖様に見守られながら運航されているのではないでしょうか。