第404話 2024年問題抱える建設業 デジタル化が国策である理由

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、公園を散歩しながら投資談義を行っています。


神様:早いもので、2024年も折り返し地点を迎えようとしています。2024年前半ではどんなことが印象に残っていますか?

T:そうですね。日経平均株価が2月に史上最高値を更新したことは印象深いです。その他では生成AIの浸透、半導体を始めとする国内投資の活発化のほか、物価高と賃上げの動向は日本経済が新しい成長局面を迎えつつあることを感じます。一方で少子化、労働人口の高齢化が加速し、労働力不足はますます深刻になっています。物流や医療などの「2024年問題」は、2024年半ばを迎えても明るい見通しが見えていないですね。

神様:まさに、その通りですね。これまで物流(第394話 「物流の2024年問題」本格化 ドライバー不足どう解決する?)や医療(第399話 過酷な医師の労働実態 注目浴びる「デジタルヘルス」)の2024年問題についてお話してきましたが、もう一つ2024年問題を抱える業界があります。

T:建設業界ですね。国内の設備投資が活発化する中で、人手不足も相まって最も深刻な事態に陥っているのは建設業ではないでしょうか。その上、2024年問題への対応も要求されます。建設業界の現状はどのようになっているのでしょうか?

神様:2024年4月より時間外労働時間の上限規制は原則として月45時間以内、年360時間以内となっています。やむを得ない事情で労働者と事業所が合意した場合は特別条項が適用され、例外として年720時間が上限となります。物流や医療と同様に、このルールを守らなければ罰則が科される場合もあります。

T:もともと建設業では、他の産業と比べて労働時間が長く、休日も少ない印象がありますが。

神様:おっしゃる通り、業界では長時間労働が常態化しています。建設業における平均的な休日の取得状況の調査によると、「4週6休」以下が大半を占めています。

T:4週6休以下ということは、1週間に2日の休みが取れない状態ですか。今後さらに高齢化、労働人口の減少が進むわけですから、人材不足の解消は非常に困難であるように思えます。問題として改善すべき点は明確になっているのでしょうか?

神様:建設業界の労働環境には様々な課題があります。取引関係の弱い中小企業においては長時間労働になりやすく、商習慣の見直しや取引条件の適正化も必要です。適正な工期の設定、適切な賃金水準の確保、さらに週休2日の推進などの休日の確保などを進めることは、発注者の協力が必要になります。これまでの習慣をいかに是正できるかがポイントとなります。

T:労働人口の減少は解消できるのでしょうか?

神様:はっきり言いますと、人材不足の解消は困難です。労働環境を適正なものにすることで、若い新しい人材が獲得できることは期待できます。しかし、解消することは難しいでしょう。したがって、建設業の労働環境をさらに改善させるには、デジタル技術を用いた「建設Tech」を活用することが不可欠です。

T:建設Techとは何でしょうか?

神様:建設業界のデジタル化、DXです。経済予測プラットフォーム「XENOBRAIN」では、国内の建設Tech市場は2029年に4,737億円となり、2024年の市場推計値から31.8%成長すると予測しています。今後大きな成長が期待できる分野と言えるでしょう。

T:少ない人材で生産性を向上させ、さらに良いものにしていくためには、建設業界のデジタル化が欠かせないということですね。

神様:5月30日に首相官邸で行われた「国内投資拡大のための官民連携フォーラム」でも建設業のDXが挙げられ、岸田総理も支援していくことを表明しています。また、国民生活や経済活動の基盤となるインフラの整備や維持管理も建設業の重要な役割です。国土交通省では、「i-Construction 2.0」を策定し、建設現場のオートメーション化による生産性向上(省人化)の取り組みを進めています。国交省は2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、生産性を 1.5倍向上させることを目指しています。

T:建設業は今後の日本経済の成長を支える土台を作ります。この困難な状況を乗り越えるためには、建設業のデジタル化はまさに国策。そうなると、建設Techを支援する企業も国策銘柄として注目されるかもしれませんね。

(この項終わり。次回7/3掲載予定)

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