「レオパルト2」は誰の子? ドイツ主力戦車の知財権めぐり裁判 KMWとラインメタル 友好関係だったのになぜ

知的財産権は著作物に限った話ではありません。ドイツで主力戦車「レオパルト2」の知的財産権は誰が持っているのかを巡り、同国の大手軍需企業であるKMWとラインメタルが対立を深め、法廷問題にまで発展しています。一体なぜこのようなことになったのでしょうか。

こじれるきっかけKF51「パンター」の発表

 ドイツで主力戦車「レオパルト2」の知的財産権は誰が持っているのかを巡り、同国の大手軍需企業であるKMWとラインメタルが対立を深め、法廷問題にまで発展しています。

 ことの発端は、ドイツとフランスが共同で行っている次期主力戦車メイン・グランド・コンバット・システム(MGCS)の開発に関わる問題です。この計画はフランスのネクスター、KMWが合併してできたKNDSを中心に進められ、ラインメタルも130mm滑腔砲を提供する方向で話が進められていました。 しかし、ラインメタルは2022年7月に行われた欧州最大規模の防衛産業イベント「ユーロサトリ2022」で、MGCSとは別に独自開発の主力戦車KF51「パンター」のコンセプトモデルを突如発表。これを抜け駆けとみたKMW側は激怒し、今後のパートナー体制に懸念を表しました。 この反応を受け、ラインメタルCEOであるアーミン・パッパーガー氏は2023年3月、インタビューで「レオパルト2A4までの権利は同社にある」と発言しました。結果、火に油を注ぐこととなり、激怒していたKMWのCEOであるラルフ・ケッツェル氏は発言の撤回を求めるも拒否され、「権利を侵害する虚偽で誤解を招く主張」をしているとし、ミュンヘン地方裁判所に法的保護を求めることとなりました。

判決は2023年5月2日に下る!

 なおレオパルト2は、ラインメタルが砲塔や射撃管制システムを、KMWがシャーシを製造しています。ラインメタルは自社がレオパルト2の知的財産権を持つ根拠について、同戦車の生産拠点のひとつであるキールでの生産権利を2000年にKMWから引き継いでいるため、「ライセンス生産されたレオパルト2A4は自社の権利に基づいている」としています。 両社の代表者は5月2日ミュンヘン地方裁判所で会談し、レオパルト2の知的財産権について決定します。仮に裁判でシャーシの知的財産権がラインメタルにないことが確定した場合は、同戦車のシャーシをベースにしているKF51「パンター」はKMWの知的財産権を侵害していることとなり、今後の開発に大きな影響を及ぼします。逆にラインメタルが勝訴すれば、KMWを無視して、開発する自由が得られます。 権利問題が表面化する以前、KMWとラインメタルはボクサー装甲車やPzH2000自走榴弾砲といったドイツ軍の軍用車両開発を通じ10年以上良好な協力関係にありました。しかし、KMWがKNDSグループになった2015年以降、パートナー関係が冷え込み始めたと、現地メディアでは報じられています。

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