全英後4カ月の喜怒哀楽 渋野日向子、「葛藤」からの「吹っ切れ」

<LPGAツアーチャンピオンシップ リコーカップ 最終日◇1日◇宮崎CC(宮崎県)◇6535ヤード・パー72)>

締めくくりの記者会見で繰り返し語った「感謝」、「支え」。渋野日向子のツアー1年目は、思いがけない全英制覇とともに喜怒哀楽にあふれる終盤4カ月に突入。最後は「楽」のバーディ締めで幕を閉じた。

2017年の秋に現コーチの青木翔氏と出会い、スイング、練習法、マネジメント、何から何まで新しいエキスを注入。才能は瞬く間に開花し、18年7月には2度目のプロテストで晴れて正会員となり、今季のサクセスストーリーにつなげた。

昨年末のファイナルQTで40位に入り前半戦の出場権は得たが、開幕戦の「ダイキンオーキッドレディス」は出場がかなわず。シーズン2戦目の「ヨコハマタイヤPRGRレディス」が正会員後のレギュラーツアー初出場となったが、ここでいきなり優勝争いに食い込み最終日最終組の枠を射止めた。鈴木愛に屈したが、「この試合は大きかった」と青木コーチは振り返る。年間の目標としていたシード権獲得に近づく第一歩を踏んだ。

4月の「KKT杯バンテリンレディス」では初日最下位からの大逆転予選通過。「ここで何かをつかんだのではないか」(青木氏)とまたしても注目を集め、翌週の「フジサンケイレディスクラシック」では自己最高の2位。そして2週後には「私でいいんですかね?」の名言を残し、メジャー大会の「ワールドレディスサロンパスカップ」でツアー初優勝を飾った。

天真爛漫な20歳はその後、一時不調に陥るも6月末の賞金ランキング上位の資格で全英の出場権を獲得すると、7月初戦の「資生堂 アネッサ レディス」でツアー2勝目。シンデレラストーリーを駆け上がり、トレードマークの笑顔が日本のファンにも定着した。

ゴルフ界では渋野の名前は知れ渡り、ルーキーのサクセスストーリーに沸いたが、8月に入ると、一夜にして国民的ヒロインに駆け上がる。無欲で臨んだ初の海外試合「全英AIG女子オープン」では、世界を驚かせる活躍を見せた。4日間笑顔を振りまき、日本人42年ぶりの海外女子メジャー制覇。そんな歓喜の瞬間は人生が変わるとともに、葛藤との闘いの始まりでもあった。

帰国直後は周囲の目が劇的に変わった。メディアにも引っ張りだこ。疲れもピークに達し、体調を崩した。それでも帰国後2戦目には優勝争い。翌戦も5位に入ったが、心の中はどんどん苦しくなっていく。

「9月かな。コニカミノルタ杯とかその辺」。結果を出さなければいけないというプレッシャーに加え、“オーバーパーなしラウンド記録”更新への重圧と、心労が重なっていく。このときは無理に笑顔をつくることもあったと明かし、20歳の表情には苦しい笑みが現れる。「なんであのときできたのにできないのかと自分に怒ったり…。追い込みすぎたと思います」。それでも、苦しみを乗り越え翌週はあの大逆転劇を演じる。

「デサントレディース東海クラシック」では2日目を終えて首位と8打差。この差が渋野の気持ちを吹っ切れさせたのかもしれない。最終日は「64」の大爆発。上位陣が伸び悩むなか今季3勝目をつかんだ。メンタル面で苦しんだ時期は「この優勝があったから乗り越えたんですかね」と、自然な笑顔が戻るようになった。

ここで飛び出した「皆さん思っていると思いますが、やっぱり賞金女王が次の目標」。だが、ここからさらに渋野の苦しい時期は続いていく。期待に応えたい気持ちと、伴わない結果。ルーキーイヤーで海外メジャー制覇に国内3勝。高まる期待はとどまることを知らず、国内での笑顔は影を潜める。「バーディを取れば自然とにやけてしまう」としていた自然の笑顔もどこか不自然に映るようになった。

申ジエ(韓国)との賞金女王争いが佳境に入るかと思われた11月。鈴木の猛烈な追い上げにあい、まさかの三つ巴の戦いに突入。3人が同組で争った「伊藤園レディス」では、初日こそ1アンダーで切り抜けたが、2日目はスコアを伸ばすことなくまさかの予選落ち。涙を流した。ここで終戦…。ここまで見せてきたストーリーはこのまま終わるのか。ここで一つの転機が訪れる。

予選落ち直後、青木コーチのもとに練習に行く車のなか。父の悟さんと何気ない会話を交わした。渋野も悟さんも詳しい内容を明かすことはないが、プロとしての心構え、「ファンを喜ばせるのがプロ」という基本に立ち返ることができた。ここで再び吹っ切れたのか、翌週の「大王製紙エリエールレディスオープン」で見事に優勝。鈴木との同組対決を制しての勝利。奇蹟の逆転女王に可能性を残し、最終戦に入った。

初日から3位発進。優勝か2位が逆転戴冠の絶対条件だったが、渋野の頭の中には女王の2文字はなかった。楽しく回る、ギャラリーを喜ばせる。そして、「私が勝手に名付けているんですけど」というチームシブコのために、関係者、家族、ファンに最後の笑顔を届けたいという思い。優勝、逆転女王は逃したが、今年のオーラスとなった最終ホールではバーディ。激動の1年を締めくくる満開の笑顔を咲かせた。

突如として出現したニューヒロイン。ゴルフ界の枠を越えて誰もが知るアイドルとなった渋野。11月に21歳になったばかりのルーキーにとっては、まさに喜怒哀楽が詰まったシーズンだった。それでも最後にバーディで締めくくるのは渋野らしさ。これまで見たこともないようなシンデレラストーリーを駆け上がったその姿には、やっぱり全身で表現するスマイルがいちばん似合っていた。(文・高桑均)


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